蔵書票

蔵書票

麻(2025年4月2日)

 2024年9月25日のこの欄でM・Mさんがエクス・リブリスというタイトルの文章を書かれていました。久し振りにエクス・リブリスという言葉を聞いていろいろと思い出しました。

 もう何十年前になりましょうか、エクス・リブリスについて書かれた楽しいエッセイを幾つか読んだことがあります。どの著者のどの本に書かれていたのかを思い出せないまま、書庫に残された本から関係のありそうな幾つかを取り出しチェックしましたが、見当たりません。既に処分した本の中に書かれていたのかも分かりません。
 そこで(私の記憶が正しいと信じて)思い出すままエクス・リブリスについて書いてみようと思います。まずエクス・リブリス(ex libris)という言葉についてですが「〇〇の蔵書から」という意味のラテン語で日本語では蔵書票と訳されています。日本では昔からいろんなものに印鑑を押す習慣があったことから自らが保有している書物にも印鑑(蔵書印)を押していました。しかし明治の終わり頃に外国ではエクス・リブリスを書物に貼付することがあること、そして貼付されたエクス・リブリスが美的にも素晴らしいものであることが知られました。そこで我が国でも著名な画家等がエクス・リブリス作成を手掛け、また書物愛好家あるいは書物蒐集家が自らのエクス・リブリスを作成していたとありました。(これを読んで私も自分用のエクス・リブリスを作成しようかと一瞬思ったことは内緒です)
 私の記憶では、概ねこのようなことが書かれていました。そこではエクス・リブリスの美的側面に注目し、国内外のエクス・リブリスを蒐集する人たちの存在にも触れていました。

 ちょっと記憶を確かめようと蔵書票というキーワードで図書館の在庫を検索しました。次のような本がヒットしました。中には推理小説だろうと思われるタイトルの本もありましたが、取り敢えず全部予約しました。このような本を借りる人はないのか、いずれもすぐに手に入りました。

  1. 蔵書票の魅力(樋田直人、丸善ライブラリー)
  2. 書物愛 蔵書票の世界(日本書票協会編著、平凡社)
  3. 蔵書票の美(樋田直人、小学館)
  4. 黄金期の西洋蔵書票(クリフ・パーフィット、日本古書通信社)
  5. 図書館魔女の蔵書票(大島真理、郵研社)
  6. 謎の蔵書票(ロス・キング著、田村義進訳、早川書房)

 卒読というのが正しいのか、ざっと内容に目を通しましたところ、この内1~3は蔵書票自体についての書物で、その歴史や楽しみ方、蔵書票製作者とその作品、蔵書票蒐集の世界などについて興味深い内容が書かれていました。蔵書票作家としての畦地梅太郎や芹澤銈介の名前もありました。また4はA4サイズの大型書物ですが、アールヌーボー、アールデコの美しい、魅力的なエクス・リブリスがカラー写真で数多く掲載されていました。中に女性の裸体画のエクス・リブリスが何点もあったのにはちょっとびっくりしました。

 これらの書物では蔵書票についていろんな意見、見方、あるべき姿等が述べられていますが、私自身何が正しいのか、どのような意見が主流なのかはよく理解できていません。ただ、掲載された蔵書票がとても美しい、これらを集めたい、という気持ちが生ずるのはとてもよく分かりました。
 もし、私がアールヌーボー、アールデコの頃の蔵書票の何点かを手に入れることがあったとしたら、私はそれらをランダムに並べて額に入れ書斎の壁に飾るでしょう。

 これらの書物を読みながら変なことに気が付きました。電子書籍です。電子書籍と蔵書票は現在の私の頭では関連付けることができません。電子書籍が大勢を占めることになりますと、蔵書票は消え去ることになるのでしょうか。それとも電子的な蔵書票が作られることになるのでしょうか。

 借り出した本の5は前4者とは異なり、タイトルにある“蔵書票”という言葉に“エクス・リブリス”とルビが振られています。蔵書票を文字どおりのエクス・リブリス即ち「○○の蔵書から」との意味で使われているように思います。フェミニズム、戦争、民族、貧困、受容と未来等々のテーマでいろんな本や映画を数ページで紹介しつつ自らの意見を述べている本です。私は自らが関心を持っているテーマだけを読みました。6は発行所名やタイトルから予想したとおり推理小説のようです。MARC(machine-readable cataloging)データベースによりますと「王政復古直後のロンドン。好学の徒をもって任じる書店主インチボルドは、ある貴婦人から行方不明の稀覯本捜しを依頼された。やがてその本に潜む壮大な謎が浮かぶ。本に関する蘊蓄満載の歴史ミステリ」とあります。2段組348頁のこの本を読むには腰を据えてかからねばなりません。これから読むことにしますが、返却期限までに読み終わるでしょうか。