深夜の時間帯だったが、ドキュメンタリーのその迫力に眠気が吹き飛んだ。
撮影時の年齢は、作家ロバート・カロ(86歳)。担当編集者ロバート・ゴットリーブ(91歳)。
二人の出会いから、仕事の進め方、また、それぞれの仕事へのかかわり方など、詳しく取材をしてある。
監督は編集者の娘リジー・ゴットリーブである。監督がまったくの他人であれば、なしえない好撮影場面があったと思われる。実際に親子の微笑ましい場面はいくどとなくあった。撮影現場の良好な雰囲気が伝わってくる。
ロバート・ゴットリーブが編集にたずさわった本は生涯でおおよそ700冊以上。数社の社でキャリアをかさねている。調べると数名の作家の名前がでた。既知のトニ・モリソン(ノーベル文学賞作家)、サルマン・ラシュディ …
二人が完成をめざしている本「リンドン・ジョンソン伝記」(未邦訳)。大統領専用機機内で宣誓をする姿のジョンソン副大統領。その後に大統領になった人物だ。
「リンドン・ジョンソン伝記」は全5巻、うち4巻までは刊行され、最終の5巻は執筆中。
ソファーでこの伝記を読む俳優イーサン・ホーク。この俳優は大変な読書家だそう。もちろん、演者として出演映画の作品を観たことがある。読書好きの俳優は好ましい。この場面で出ているということは、将来この本が映画化された時、演者か脚本の執筆か … なにかでかかわりがあると見ごたえはあるのかも知れない。
ロバート・カロが執筆したこの大作の
第一巻(1982年)青年期~権力の道
第二巻(1990年)上院議員選挙の不正と躍進
第三巻(2002年)上院の支配者
第四巻(2012年)大統領昇格とケネディ暗殺後
第五巻(執筆中) ベトナム戦争など
ジャーナリストであり作家のこれらを長年編集担当してきた労力 … そして、その世界の二人の力関係を思う。
ある場面では編集者のゴットリーブが冷静に語る、「年齢では私のほうが年長である」。ふと、ステージに立つギタリストにおきかえてみた。作家はリード・ギター、編集者はベース・ギター。ベース・ギターが好きな私は、編集者に憧れる。
編集者ゴットリーブにはいくつかの異なる仕事がある。座してばかりではなく、とびまわっている。しなやかな編集者だ。
編集に関しても作家の才能を最大限にひき出す。誤字脱字、句読点にいたるまでこだわりを持つ。
映像の中の二人の表情はとても似ていたように思う。
深夜の時間帯で私の観た錯覚かもしれないが、まずメガネの顔だち。スマートな立ち姿。公園を歩く姿 … 名前もロバートでこれは同じ。
きわめて重厚な内容を執筆する作家に、これまた、きわめて重要な編集作業をする編集者。似ていても不思議ではない。
ちなみに、若い頃の二人は似ていないと思った。
二人の打ち合わせの様子は、今まで誰も見たことがないようだが、家族(娘)が監督し、又年齢を重ねたと言うことか、画面上にほのぼのと一瞬あらわれる。そこではまず、再会を喜び、室内への移動。 作業の始めに、「えんぴつ」を必要とするがでてこない。「えんぴつ」でなければならないようだ。ある女性がシャープペンシルや消しゴムをすすめるが、かたくなに笑顔で「えんぴつ」をもとめる。長いキャリアと「えんぴつ」のシーンがシンプルで素晴らしい。