「フランケンシュタイン」から

「フランケンシュタイン」から
M・M(2026年6月24日)

「フランケンシュタイン」は読んでいない。

 この小説を執筆した女性作家「メアリ・シェリー」の人生に興味があった。
 そもそも、「フランケンシュタイン」の作者が女性だとは知らなかった。

 メアリ・シェリー 「フランケンシュタイン」から共感の共同体へ
    シャーロット・ゴードン著 小川公代訳

「フランケンシュタイン」のクリーチャーの後ろに見えてくる、SF/現代ホラーの母の人生を探ってみませんか … 白水社 推薦文

 メアリ・シェリー 1797年8月30日英国生まれ(夜の11時20分 父ゴドウィンの日記より)。
 生まれて数日後に母を失う。政治思想家の母ウルストンクラフトは娘に多大なる影響を残した。

 女性が表にでて、活躍することが困難な時代である。
 母が、女性の権利、社会的主義、教育や政治的改革をうったえ、著書を残しているからか、早熟なメアリ・シェリーにその部分がうけつがれていくことがわかる。

 後年メアリは、百科事典に著名な男性著述家について論説を書くように依頼(仕事)を受けるのだが、このそれぞれの男性たちの妻、姉妹たち、娘たち、母親たち、恋人たちに必ず言葉をそえている。女性が男性の後ろにかくれることなく、光をあてた。

 またメアリは小説で得た収入の中から、身内や困窮する女性たちに援助をして助けている。母の時代とは異なる方法で弱者を救っていた。

 メアリは小説や旅行記において、以下のような主張をこめている。

 もし女性がもっと自立することが許されたなら、世界でもっと力を有することができたなら、暴力性は弱められ、公平性は増し、不正義は減少するだろう。女性の権利を回復することは世界を少しでも良くすることにつながり、社会の改革は人類すべて不可欠である。

 また短編小説では

 男性による暴虐や女性の受け身的な態度がもたらす危険性を描きながら、女性が担う役割の重要性を強調した。

 メアリとメアリの母が重なってみえる箇所である。母の教えに傾倒していくようすがわかる。
 強いきずなで結ばれた母娘だ。

 さまざまな出会いがあり、経験があり、環境がかわることでメアリが「フランケンシュタイン」を書くことになる。きっかけは・・・きっかけは若い作家の友人たちと、もっとも恐ろしい物語、怪談を書き勝者を決める … 試み。この挑戦の勝者がメアリだ。

 学生ヴィクター・フランケンシュタイン、クリーチャー(創造物)…

「歯止めのきかない男性の情念が文明を滅ぼしてしまう」

 後年、メアリ自身の改訂版「フランケンシュタイン」(1831年)が出版されている。
 時代が自立した女性を認めない中、誰が書いたのか匿名であった著が認められた。

 私は怖くて「フランケンシュタイン」関連の本や映画は読んだことも観たこともない。
 しかし、この本のテーマの奥深さにおどろいた。多くの負の部分をのりこえて生み出されたメアリの本。
 訳者解説の項で紹介されたアラスター・グレイ原作「哀れなるものたち」は本も映画も読了観了。
 これは「フランケンシュタイン」を骨子にした作品だった。

 英文学研究者は膨大な資料を読みとき、メアリを浮かび上がらせている。読み手の胸が救われる素晴らしい内容である。