私は、(ⅰ)指定管理者制度が地方自治法第244条の2(公の施設の設置、管理及び廃止)の第3項から第11項で定められているということ、(ⅱ)その内容は「地方公共団体が設置した公共施設につき民間企業や団体を指定してその管理・運営を委託する制度」であること、(ⅲ)その狙いは施設の管理や企画運営面で民間のノウハウを活かし、機能や魅力の向上を図ることにあること、(ⅳ)この制度を図書館へ適用した結果に関しかつてその功罪が新聞紙上で大きく報じられたこと、以外には知識がありません。
暇でもあるし、指定管理者制度の図書館への適用についてちょっと勉強しようと、市立図書館の在庫を検索し、
① 指定管理者制度問題解決ハンドブック(宮脇 淳編著、東洋経済新報社)
② 岐路に立つ指定管理者制度(松本茂章編著、水曜社)
③ 公立図書館における指定管理者制度(水沼友宏、樹村房)
④ 図書館政策セミナー講演録・法的視点から見た図書館と指定管理者制度の諸問題(鑓水三千男、日本図書館協会)
の4冊を借出しました。
その後、文部科学省のホーム・ページで⑤平成22年3月付の株式会社三菱総合研究所による58頁の「図書館・博物館等への指定管理者制度導入に関する調査研究報告書」(平成21年度文部科学省委託)という報告書を見付けました。
上記の文献のうち③は副題に「導入館と非導入館が提供するサービスの比較」とあるように公開されているデータを用いてマクロな分析を行い、結論を出しています。私が求めていた文献であるので丁寧に読んだつもりですが、著者の博士論文を基にした学術書であることもあり、ド文系の私にとってはそこに書かれているデータ分析は全くチンプンカンプンでした。①と②は指定管理者制度全般に関する著作であるため、「指定管理者制度の図書館への適用」に関係する個所だけを、誤解しないように注意しつつ摘まみ読みしただけです。④は指定管理者制度と図書館法その他の法令の関係について法的論点を中心に議論されている点に興味を惹かれました。そこでは、少数説だと思われますが、「図書館に指定管理者制度の導入が困難な理由」が、図書館法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律や図書館協議会との関係で述べられていました。⑤は検討委員に市立図書館長や国立国会図書館の資料提供部電子資料課長という実務家が入っていることもあり、現場からの見方に注意しつつ読んだことです。
アガサ・クリスティ創るところのエルキュール・ポワロ探偵が言う「灰色の脳細胞に汗をかかせる」ほど注意して慎重に読んだとは言い難いのですが、それぞれの著者の言わんとするところを誤解したことはないだろうと思っています。
②では著者が総務省の2018年公表のデータを基に作成した「図書館において指定管理者制度を導入しているのは都道府県施設で11.3%、指定都市施設で23.5%、市区町村施設で17.4%」という数字が印象に残っています。いずれも体育館、博物館等の施設に比べて数字は小さいものでした。
③では「指定管理者制度を導入している館(指定館)の方が導入していない館よりも、「館長が司書資格を持ち、専任、常勤である場合が多い」ことがデータで示されていました。そこでは
また、
しかし、著者は「この結果をもって図書館に指定管理者制度を導入した方が良いのか、悪いのかは判断できない」としています。なんとなれば、「それぞれの図書館は、それぞれの目的やビジョン、利用者、職員、予算や蔵書規模、施設・設備や歴史的背景をもっており、一つとして同じ図書館は存在しないからだ」と。
⑤では最後の「調査研究を終えて~委員からのコメント」欄の実務家検討委員2人のコメントを興味を持って読みました。
静岡市立御幸町図書館長 高広 豊氏のコメント
今まで図書館……の経営は「効率化」、特にコストの視点で語られがちでした。しかし、情報や知識を提供するサービス機関であるからには、サービスに付加するべき新たな価値の創造をもっと重視するべきでしょう。
私が司書……にもっとも期待したいのは、彼らが不断のイノベーションの主役となって、激しく変動する外部環境に適応し、危機(例えば、従来のサービスの腐朽化)を機会に変えることです。彼らが担う部分を外注化するべきかどうか判断する上で「イノベーションを起こすにはどちらが有利か」という観点はきわめて重要なはずです。「どちらが安いか」とは異なる重要性がこの報告書によって広く認識されることを望みます。
そして、その期待を実現するにはどうすればいいか、直営館か指定館か、指定館とするにしても、どのような内容の協定を結ぶのかについても具体的に考える必要があるのではないか。抽象論で直営館と指定館の優劣を議論しても話は前に進まないと思ったことです。