掬い上げられた文章
麻(2026年6月17日)
このような書籍をどのように読めばいいのでしょうか、どう考えればいいのでしょうか、この本を書店で買ったときにはかなり気になりました。最初に思ったのは安直な作りの本だなあ、というものでした。
この本「自分の始末」は曽野綾子さんの過去の数多くの出版物の中から出版社が決めたテーマ「自分の始末」に直接、間接に関係する発言が書かれている29作品を選び、そこから出版社が掬い上げた文章を出版社が纏めたものです。
読んでみていろんな内容の過去の出版物からの抜粋であっても書かれている内容に矛盾が起こっていない、物の見方が変わっていない、基本路線から外れていないことが判りました。これは著者の思考が柔軟であり他を受け入れる包容力があるが、極めて強靭な精神の持ち主、筋の通った意見の持ち主だからだろうと思い、いろんなシチュエーションに於ける意見や考え方を知ることには意味がある、と考えを改めました。
まえがきで曽野さんは
この本「自分の始末」は曽野綾子さんの過去の数多くの出版物の中から出版社が決めたテーマ「自分の始末」に直接、間接に関係する発言が書かれている29作品を選び、そこから出版社が掬い上げた文章を出版社が纏めたものです。
読んでみていろんな内容の過去の出版物からの抜粋であっても書かれている内容に矛盾が起こっていない、物の見方が変わっていない、基本路線から外れていないことが判りました。これは著者の思考が柔軟であり他を受け入れる包容力があるが、極めて強靭な精神の持ち主、筋の通った意見の持ち主だからだろうと思い、いろんなシチュエーションに於ける意見や考え方を知ることには意味がある、と考えを改めました。
まえがきで曽野さんは
扶桑社のていねいな「捜索」の結果(捜索という言葉はこういう場合いかにも情緒に欠けているということは知りつつも)、この始末の悪い自分に対して過去の私は何を言ったかを洗い上げられ、集めて並べられてみると、厚顔な私もいささか羞恥を感じずにはいられないが、人は他人には聞こえないほどの「ため息」を漏らしつつ生きるものなのかも知れない。‥‥‥「自分の始末」の意図するところは、実はたった一つ、できるだけあらゆる面で他人に迷惑をかけずに静かにこの世を終わることである。私たちは一瞬一瞬を生きる他はないのだから、その一瞬一瞬をどう処理するか、私はずっと考えてきた。‥‥‥これは私の悪あがきの記録なのだ。しかしすべてはれっきとした私の一面なのだから、私はその横顔をこんなにもていねいに掬い取って本にしてくれた編集部に、深く感謝しているのである。
と書いています。
この本に取り込まれている文章は長いもので3頁、短いものだと4行です。「定年後を輝かせる『新たな仕事』」から始まり「自分なりの『始末のつけ方』」まで10に章分けされた章のそれぞれに「迷いから解き放たれるとき」「幸福を見つけ出す才能」などと(出版社によって付けられたと思われる)タイトル付けされた幾つかの文章が並んでいる、という形式です。
選ばれている文章の中にかつて読んだことのある文章の断片を幾つか思い出せたのは、最近の記憶力減退を嘆いている私にとっては嬉しいことでした。
この本について言えば、文字を読むのは簡単ですがそれぞれの文章の意味するところやその章に収められている文章相互間の関係を理解するには少し時間がかかったものもあり、理解できないものもありました。
やはり、文章はある程度の長さでないと意を尽くすことができない、ということを改めて感じたことです。この本に選ばれた文章を手掛かりにその出典元の本を読むのが正しい読み方かも知れません。
曽野さんには他に「安心録 『ほどほど』の効用」(祥伝社黄金文庫)というこれも29の出版物から集められた本もあります。ペラペラと頁を繰っていますと、(私には珍しいことですが)黄色のマーカーでサイドラインを引いた文章が二つありました。
昔「国境なき医師団」のフランス人医師が講演した後、質問の時間に一人の日本人が手を挙げて尋ねた。「あなた方は戦乱の土地に、まだ銃声と混乱が続く時に行って治療を開始する。そういう時その土地の医師法はどうするのですか?」。するとフランス人の医師は明確に答えた。「そこに患者がいる。そして傍らに患者の命を救える私たちがいる。それ以上の何を気にする必要があるのですか?」それが人間の答えというものだ。
私が働いている日本財団では、私がイヤな宿題を出した。夏休み中に、なんでもいいから哲学の本を一冊読んで、四百字詰め原稿用紙二枚の感想を書いて出すことである。私がそれを斜め読みする。夏休みには直接必要でない知識で自分を太らせなければならない。
いずれも私は最後の文章にサイドラインを引いていました。その理由は、前者ではことの本質を一言で示していること、後者では功利的、効率的な読書への反省が頭にあったこと、かも知れません。