「ぐりとぐら」の思い出

「ぐりとぐら」の思い出

I・S(2015年10月7日)

 小学校3年生の施設見学で、毎年いくつかの学校が私が司書として勤務する図書館にも来てくれます。
 ある年、図書館の見学はするけれど本は借りません、という学校がありました。好きな本を選んで借りる時間はどの子もいちばん楽しそうなのに、と残念に思いましたが仕方ありません。
 でもせっかく図書館に来るのだから、何か本に触れてもらう時間をつくりたい、と思いました。そこで、図書館の説明をする時間の中で、1冊絵本を読むことにしました。「ぐりとぐら」です。人数が多かったので大型絵本を用意しました。
「私がやります」いさましく手を挙げたのはいいけれど、500席もあるホールの客席を使って、何クラスもの子どもたちを相手にしての読み聞かせです。大型絵本の扱いにも不慣れで、マイクを持ちながらスムーズにページをめくれず、見かねた先生が助っ人に入って下さいました。
 3年生に「ぐりとぐら」は幼すぎるかと心配しましたが、子どもたちは集中して聞いてくれ、緊張したけれど、とても充実した時間でした。
 それから何日かたって、2人の女の子が「ぐりとぐら」を探しに図書館にやってきました。学校で読んでもらった、とのこと。
「先生に読んでもらったん?」と何気なく聞くと「図書館で読んでもらった」と。
 それは私ではありませんか!
 読み聞かせの経験もろくにない私が思いつきと勢いだけで選んだ「ぐりとぐら」でしたが、それを覚えていてくれて、わざわざ図書館に探しに来てくれた2人の女の子のことを、何年もたった今でもときどき思い出します。
 探している人に本を届けること、本が届いた人の喜びをいっしょに感じることが、私の仕事であり、喜びなのだと教えてくれた、小さな出来事でした。