レファレンス協同DBを使ってみた

レファレンス協同データベースを使ってみた

KEI(2022年1月19日)

 国立国会図書館に「レファレンス協同データベース」というデータベースがある。このデータベースは、国立国会図書館が全国の図書館と協同で構築している調べ物のためのデータベースで、レファレンス事例、調べ方マニュアル等のデータを蓄積し、これらをインターネットを通じて提供している。私は図書のレファレンスに関しては現時点では一番役に立つデータベースだろう、と勝手に思っている。
 あるとき唐突に「権腐十年」と言う言葉を思い出した。権力の座に長年居座っている諸々のスポーツ団体のトップが関与したあるいはトップに関連した不祥事の報道に接したときだったかも分からない。
 この言葉に現れる4つの漢字からは「権力の座に10年も居座ると、その権力の行使に腐敗が生ずる。だから長期間権力の座に留まることはよくない。」という程度の意味であると推測される。
 出典は何なのか、どこに書かれているのか、を知りたくなりレファレンス協同データベースで調べてみた。すると次のようなことが分った。
 元熊本県知事の細川護熙氏の著書「権不十年」(日本放送出版協会、1992)の160頁に「花に十日の紅なし、権は十年久しからず」の文言があり、これは「中国の秦の時代のはやり言葉などをまとめた『通俗編』の一節から引いたものである。また『権不十年』は昔の朝鮮の古い格言に『権腐十年』という言葉があるが、“腐る” では表現がきつすぎるので、「不」という字に置きかえたものだ。」と出典らしきものが書かれている。そして、細川氏がここに書いているそれぞれの言葉について調査の結果を示す「回答プロセス」が付されている。
 その回答プロセスには、(1)「通俗編」については、国内出版では活字版と思われる資料はないこと、(2)「韓国の故事ことわざ辞典」(角川書店 1987)の172頁には「権不十年」(けんはじゅうねんならず)いかに権勢ある地位にあっても、それがいつまでも長続きするものではなく、やがて没落の憂き目に陥ること。ハングル表記もあること。類句として「花無十日紅」が紹介されているが、出典はないこと、(3)その他調査済資料として「成語辞典・名言名句辞典・ことわざ事典」など15の事典、辞典が挙げられているが、いずれにも記載がないこと、が書かれている。
分かったようで分からない回答だが、ただ「権不十年」という言葉はあるが、「権腐十年」という言葉については、出典は疎(おろ)かその存在自体も怪しいということは分かった。
 ここからは、私の推測である。元々は「花無十日紅 権不十年久」(花に十日の紅なし、権は十年久しからず)、「きれいに咲いた花でも十日もすれば色褪せてしまう。それと同じように権力を誇った者でも十年続いた例はない」と言う言葉が韓国にあったのだろう。権力は永く続くことはない、ことを意味する言葉だったのだろう。
 この言葉が誤用されて「権腐十年」となり(あるいはこの言葉にヒントを得た誰かが「権腐十年」と言い)「権力の座に長期間居座るとその行動が腐敗する」との意味を持つ言葉として使われたのだろう。しかし、元々あった「久」と言う字は何処へ行ったのだろう。
 由来はともかく、「権腐十年」は「権不十年久」とともに真理であろう。
 以上、暇に飽かせての「レファレンス協同データベース」利用の結果報告である。