アマチュアが書いた旅の本

アマチュアが書いた旅の本

KEI(2021年1月20日)

 一時期、旅のプロではないアマチュア、それも還暦を過ぎた人物が書いた海外個人旅行の本を楽しく読んだことがある。個人で行く海外の旅について計画段階でいろいろ試行錯誤する過程や現実の旅でのあれこれ、更にはそれぞれの人生経験から得られた知識や考え方がさりげなく披露されるのを興味深く読んだものである。
 これらの本に触発されて「個人海外旅行をしたい」と言う気持ちが起こったこともあったが、結果的にはそこまでは踏み切れなかった。しかし、著者たちは多分「今からでも遅くない。旅に年齢制限はない」と言うだろう。
 長谷部 洋氏の「夫婦でヨーロッパ」(山手出版)や高田信也氏の「手作り熟年の旅」のシリーズ4冊(文藝春秋、PHP研究所他)が私が楽しんだ主な本で、いずれも定年退職後還暦を過ぎての個人海外旅行について書かれている。両氏とも仕事の関係で文章を書き慣れていらっしゃるお方だと拝察するが、全く異なる分野での個人的な楽しかった経験をのびのびと書かれている。この道のプロのライターとは異なった視点、論点が興味深かった。
 前者は、基礎編として団体ツアー旅行と個人旅行の利害得失を経験に照らして客観的に述べた後に個人旅行の準備のあれこれを書く。特に個人旅行についての個人旅行派のお嬢さんとのポイントをついた軽妙洒脱な会話と理論闘争でお嬢さんに完敗した経緯はよく記憶している。そして応用編として13日間のポルトガル周遊旅行の詳細な計画と実行の結果を具体的に書き綴り「夫婦でポルトガルへ行って、本当によかった」という心からの言葉で締め括る。
 後者も計画段階での楽しみを述べるところは同じであるが、計画に当たっての心情として、現在の我々が物質的欲望を充足させるために飽くことのない経済成長を追求することに疑問を抱き、先祖代々築き上げてきた諸々に目を向けないことを問題視する。そして自らを顧み「人生古希を過ぎると…もっと穏やかで落ち着いた社会…を求めるようになる」「旅の大きな目的が自分自身の『心の癒し』にあると思うようになってきた」と書く。
 いずれにしても、単なる旅行ガイドブックと異なるこれらの書物により、私は、頭の中で著者と共に計画を立て、旅行を実行し、トラブルに対処し、いろんな場所で共に感動し、現在と未来を考え、我が国と比較し、旅先での土地の人との心の交流を楽しみ、そして「心の癒し」を感じることができた。
 両氏とも伴侶と共の旅行であり、さりげなく伴侶の諸々を紹介されていることにも好感を持つことが出来た。