小さな旅とくつろぎ散歩

小さな旅とくつろぎ散歩

KEI(2020年12月2日)

 新型コロナウイルス感染予防のため2020年2月下旬以降、公共交通機関に乗っていない。友人宛のメールに冗談に「電車の乗り方を忘れてしまった」と書いたほどである。外出するのは、毎日の夕刻1時間のウオーキングと月に1回の医者通いだけとなった。
「近くでもいいからどこかへ行きたいなあ」と思っても、現実にはそれを具体的に進める気持ちにはなかなかならない。
 このような時には本で代用するに限る。ということで取り出したのは『関西小さな町小さな旅』(山と渓谷社)と『大人が選ぶ関西くつろぎ散歩』(情報センター出版局)である。ついでにかなり古い本だが『大和路の野の花』(井上千鶴、井上博道、文化出版局)も一緒に眺めることとした。
『関西小さな町ちいさな旅』には「懐かしい日本の町をたずねて」との副題が付いており、48のそれぞれに趣のある町が紹介されている。舟屋風景で有名な「伊根」、近江商人の故郷「近江八幡」、茅葺民家の「美山」などテレビ画面でも有名な町は当然ながら、「十津川」「吉野」「城崎」までも含まれている。私が過去に訪れた場所も多い。
 コロナ問題が発生する以前に、この本で「叙情的な川端風景を残す因幡街道の宿場町」と紹介されている兵庫県佐用町の平福を妻と訪れた。目的は佐用川に沿って建てられた蔵屋敷が並ぶ風景を撮影するためだった。JR山陽本線上郡駅で智頭急行に乗り換え約40分で着いた平福駅は、立派な駅舎ではあったが無人駅で降車客は私たち夫婦だけだった。
 蔵屋敷が並ぶ川端風景は素晴らしい被写体だった。さざ波も立たない川面は蔵屋敷の姿を美しく映していた。しかし、この日には穏やかに流れていたこの佐用川も、平成21年9月の台風9号の際には氾濫し付近に大きな損害を与えたことを私は知っている。
 この本で「江戸時代の町並みを残す美しい入江の町」と紹介されている坂越や三木露風の故郷の龍野(ここは「醤油蔵や武家屋敷の佇まいが美しい」と紹介されている)なども直ぐにも訪れたいと思ったが、「今は、がまん、がまん」と自らに言い聞かせた。
『関西くつろぎ散歩』にも「悠々と過ごしたい日に」「ひと味違う散歩先」「たまには少し高尚に」などと分類された訪問先が、具体的にイラスト入りで要領よく説明されていた。
 紅茶を片手にこれらの紹介文を読み、イラストや写真を眺めながら小さな旅とくつろぎ散歩をした気持ちになった。『大和路の野の花』にある野に咲いている花を素材にした生け花とそれが置かれた野の風景も気持ちを安らかにしてくれた。