国語辞典の遊び方

国語辞典の遊び方

KEI(2020年9月16日)

 国語辞典の「選び方」ではなく「遊び方」である。「学校では教えてくれない!」との副題が付されたサンキュータツオ著のこの本は、ふとしたことで私の知るところとなった。
 のんびりとNHKのラジオ番組を聞きながら、パソコンに入っている写真の整理をしていたところ、アナウンサーが「本日のお客様」としてある人物を紹介した。それがお笑い芸人をしながら日本語学者として幾つかの大学の非常勤講師を務めているサンキュータツオ氏だった。
 初めて聞く名前だったが、アナウンサーとの対話も非常に興味深く、かつ示唆に富む内容だった。特に国語辞典は日本語学の研究業績と哲学の蓄積であるという意見や数多く発行されている国語辞典にもそれぞれ性格があり、200冊以上を集めているという話は面白く聞いた。話の中で氏のこの著書も話題になっていた。
 このような経緯があってこの本を手にしたわけであるが、久し振りに「巻を措く能わず」で一気に読み終えた。
 実に面白い。例えば「国語辞典は、みんなちがう!」の項では、「美しい」という言葉の説明を幾つかの辞書を例にあげて、次のように書いている。
「岩波国語辞典」では「目・耳・心にうっとりさせる感じて訴えて来る」とあります。「新明解国語辞典」は「いつまでも見て(聞いて)いたいと思うほど」と時間の感覚が導入されている。「明鏡国語辞典」では「『きれい』と類義だが、『美しい』は文章語的で重く『きれい』は日常語的で『軽い』と書いてある。書きことばか、話しことばか、というのとはまた別に、「重い」「軽い」という言葉の質量の情報まで!「角川必携国語辞典」は、「『うつくしい』は、心にしみ入ってくるような美をいう、『きれい』は表面的な美をいう」とピシッとちがいを明確にしています。どことなく文芸の香り漂う詩的な説明ですね!(角川文庫、18頁以下)

 ちなみに現在私が愛用している表現読解国語辞典では「①調和がとれていて、快く魅力的である。②人の心を揺り動かすほど立派である」と説明されている。
 そして所々に「大人なら、国語辞典は二冊持て」(私は岩波書店の広辞苑とベネッセの表現読解国語辞典を使っている)や「『広辞苑』は国語辞典的百科事典」(私は専門的内容、詳細な説明を求めない場合は、広辞苑を百科事典的に使ってきた)というような、私の過去の経験から考えて同意できる意見も示されており、ちょっと嬉しく思った。
 解説は辞書の編纂をテーマにした小説「舟を編む」の著者の三浦しをん氏。彼女はサンキュータツオ氏を「『学者脳』と同時に、研究成果を楽しくわかりやすく人々に伝える『感性』と『サービス精神』も兼ね備えたかたなのだ。最強だ」と評し、「その最強の能力が詰め込まれているのが、本書だ」と書く。