若者が行くべき海外の10箇所

若者が行くべき海外の10箇所

KEI(2020年7月8日)

 書庫で処分すべき本を選び出していたとき、当時朝日新聞の論説主幹だった松山幸雄氏の著書「イメージ・アップ 国際感覚を育てるために」(1989年、朝日新聞社発行)に気が付いた。パラパラとページをめくっていると蛍光ペンのサイドラインが引かれている個所があった。時の経過とともに薄くなっているそのサイドラインを、「当時はこのような記述に感心したのか」「これが若かりし頃に心に留めた物の見方だったのか」「考え方の一つのヒントとしたのだろうか」などと懐かしく眺めた。
 全く記憶していなかったのだが、その著書の本文の最後尾に「海外旅行は早いうちに 推薦したい10ヶ所」という文章があるのに気が付き、処分に先立って、眼を通した。(このようなことをするから処分がはかどらない、と自らに言い聞かせながら)
 30年前に著者はどのような場所を推薦していたのだろうか、そしてその理由は何なのだったのだろうか、と興味本位で読んだのだが、その10ヶ所は「板門店、上海、エルサレム、モスクワ、ベオグラード、ベルリン、パリ、リオデジャネイロ、ウェリントン、ニューヨーク」だった。ウェリントン以外は何となく推薦された理由も推測できた。
 著者はそれぞれに短い言葉で理由を付けているが、納得できる点もあり、異論を呈したいところもある。この種の選定は、著者の思想、信条、職業は言うまでもなく、時代背景や将来のあるべき日本の姿をどのように考えるのか、によっても異なるのだろう。
 よく言われている言葉に「海外旅行の最大の収穫は『祖国・自国を知ること』にある。距離を置いて日本を眺めるという経験は、日本の長所と短所を客観的に考えるよい機会になる」というのがある。どのような場所に行ったとしても、である。
 その意味で若い人たちが海外へ行くことは望ましい。法務省のデータでは平成25年と平成30年を比較すれば、20歳代、30歳代を合わせた数では海外へ行く人数は増加している。一方、企業では「最近の若い人は海外赴任を望まない」と言われているようだが、自らを高めるチャンスを逃しているようでもったいないとは老人のお節介か。
 ところで、現在の私ならどのような都市を選び、現時点で20歳代と仮定した若い私にどのようなアドバイスをするだろう。経験不足、知識不足は否めないが、訪れたこともない都市も含め、考えて見た。
 中国では上海ではなく北京。インドのシリコーンバレーと呼ばれるベンガルール。ロシアに接しておりロシア人の比重が高い国の首都の一つ(ウクライナの首都キエフでもいいが、私ならロシア人が人口の40%を占める、スカイプの発明国でありIT大国のエストニアの首都タリンを選ぶだろう。世界遺産になっている美しい街である)。福祉大国と言われるスウェーデンの首都ストックホルム。近年経済発展の著しいアフリカのどこかの国の首都(私は、アフリカ大陸に足を踏み入れたこともなく、それぞれの国の特徴なども知らなく、56ヶ国あるアフリカ大陸の国家を、アフリカという単語で一括りにしているような人間なので、特にとりたててこの国、この都市と推薦できる知見はないが、エボラ熱や民族間の紛争のある地域や国は避けるべきだろう、とは思っている)。そしてエルサレム。
 ニューヨーク、パリ、ロンドンは外せない。最後に残された1つはどこにしよう。