ヨハネス・フェルメールの絵と本と

ヨハネス・フェルメールの絵と本と

KEI(2020年6月10日)

 ヨハネス・フェルメールの名前を知ったのは、今から40数年前である。青いターバンを巻き、真珠の耳飾りをした少女の半身像を描いた複製画が先輩の家の応接間に飾られていた。
「日本ではあまり知られていないが、17世紀のオランダの有名な画家なんだよ」と先輩は教えてくれた。これがフェルメールとの最初の出会いだった。
 この出会いから20数年が経った2000年に、日蘭交流400年記念特別展覧会「フェルメールとその時代展」が大阪市立美術館で開催され、フェルメールの作品5点が日本にやってきた。入場まで炎天下の2時間を並んで見た作品の中に、先輩の家の応接間に飾られていた少女の絵もあった。
 その後、妻とのヨーロッパ旅行で訪れた美術館や日本で開催された展覧会で見たフェルメールは24点に上る。彼の作品は全部で33点から35点あたりというところでほとんどの研究者の意見が一致していることを考えると、現存する彼の作品の3分の2超を見たことになる。
 この頃になると、特に意識した訳ではないが、フェルメールの研究書を始めとして日本で入手可能なフェルメールに関する書籍のほとんどを手元に集めていた。その中には「フェルメールの全作品を見る」ことを目的に旅をした、朽木ゆり子さんの「フェルメール全点踏破の旅」(集英社新書)や有吉玉青さんの「36作品への旅 恋するフェルメール」(白水社)もある。
 フェルメールに関心を抱いていると、いろんな折に、「フェルメール」という活字が目に飛び込んでくるようになる。あるとき「フェルメール殺人事件」という文庫本があるのに気がついた。相前後して「フェルメールの闇」という単行本を偶然に書店で見つけた。殺人事件では、今までに知られていないフェルメールの作品の真贋を巡り殺人事件が起こる。闇はすばらしい技術を持つ無名の画家が当時の材料を手に入れて贋作を制作することがモチーフになっている。
 ここまで書いて、私がフェルメール関係の書籍の収集を一旦終えた後に、どのようなフェルメール関係の本が発行されているのかが気になった。興味本位でアマゾンの書籍サイトの検索欄に「フェルメール」と打ち込んで見た。いろんな切り口の新しい本が発行されていた。著者名や表題から少し関心を持った本もあったが、眼を閉じることにした。基本的な書物は揃っている、もうこれ以上を集めても意味はない、と自らに言い聞かせて。
 フェルメールの本についてはこのように心を決めたが、最後の願いとしては1990年3月にボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から盗まれた「合奏」が取り戻され、日本で展示され、それを見ることである。なお、この盗難事件については朽木ゆり子さんの「盗まれたフェルメール」(新潮選書)に詳しい。