「パリの国連で夢を食う」

「パリの国連で夢を食う」

KEI(2019年11月27日)

 ちょっとふざけた語句ではあるが、これは川内有緒さん執筆になる書物(2014年、イースト・プレス)のタイトルである。川内さんは「バウルを探して―地球の片隅に伝わる秘密の歌」(2013年、幻冬舎)で新田次郎文学賞を受賞されている。
 この書物は、著者が30歳代で在パリの国連に属する一つの組織で5年半働いた経験を、ある程度具体的に、しかし守秘義務違反の問題を惹起しないように留意しつつ綴ったものである。現在20歳代の若者に多くの示唆を与えるだろうと思いつつ、軽妙なタッチで描かれている諸々を楽しく読んだ。
 更にこの書物は国連について私が漠然と抱いていたイメージを壊してくれ、その実態をチラッと垣間見させてくれた。
 著者の意図するところからは離れていることを承知の上で、国連について私が知らなかったこと、覚えておいた方がよいと思ったことを書いてみる。
  1. 「国連職員のカースト制度」という言葉で表現されている問題。これは正規職員とプロジェクト対応で期間を限定して採用される臨時職員(その期間も数ヶ月や1年単位、更新があり得る場合と無い場合)の差やそれぞれの間でヒエラルキーがあること、それによって待遇が大きく異なっていることなど。
  2. 「共通の価値観がない!」こと。著者は「私から見ると、国連はサファリパークのような状態だった。話す言葉も職場での格好も、ランチタイムもバラバラ」「人を結束させようと試みる時、共通の価値観やカルチャーほどありがたいものはない。…そういう強く束ねる紐を持たない国連というのは、実は世界でいちばんカオスな職場かもしれない」と書き、「そしてこの巨大な戦艦大和はずっとこのまま変わらないに違いない」と結論付ける。(「だったら、選択は二つにひとつだ。この物語の役者の一人として最後まで役を全うするのか。それとも、早いところ舞台を降りるか…」彼女は後者を選んだ。)
  3. 日本人が国連に入る方法が5種類あるということ。アソシエート・エキスパートという外務省の制度を利用し2年間各種国連機関に派遣される方法、国連本部や各機関が独自に実施するヤング・プロフェッショナル制度の下での試験に合格する方法、日本の各省庁からの出向という方法、短期雇用の臨時職員から叩き上げの方法、インターネットで公募される空席ポストに応募する方法。著者は最後の方法で某国連機関の正規職員になった。
  4. クオータ(割り当て)制度があるということ。拠出金や人口などの要因により各国から何人を正規職員として採用するかについて基準がある。この点日本人は有利である。
「清く、正しく、美しく」だけではない国連の実態をさりげなく教えてくれた一冊でもある。