まち角の図書館

まち角の図書館

KEI(2018年4月18日)

 趣味としているラケットボールを楽しむため、週に2回、片道1時間強の時間をかけて池田市にあるスポーツクラブに通っている。マイナーなスポーツであるラケットボールのコートは大阪府下でも私が知る限り4ヶ所しかなく、我が家から一番近いコートへの所要時間が片道1時間強というわけである。
 このスポーツクラブのすぐ近くの、欄干が赤く塗られている橋の袂に、高さ1.5m幅2mほどの前面にガラス戸がついた金属製の3段の本棚というか本箱が置かれている。設置されたのに気が付いたのは10数年前だったと記憶しているが…。
 最初にこの本箱の存在に気が付いたときに、興味本位で「どのような本が並べられているのだろう」と眺め、「手続不要で誰でも自由に持ち帰れる」との掲示を読み、長い外国生活を経験した女性のエッセイ集を借り出したことを覚えている。さすがに新しい書物はなかったが、単行本や文庫本300冊ほどが順不同で並んでいた。
 この本箱から本を借り出したのは、この1回だけだった。そのうちに、毎週すぐ傍を通り過ぎながらも、この本箱に注意を払うことはなく、その存在も意識から消え去った。
 ところがつい先日のこと、私と同年配の男性が本箱の前に立って、本を選んでいる場面に遭遇した。「ああ、まだあったんだ」「誰かがきっちりとメンテナンスをしているんだなあ」と少し感動した。
 クラブからの帰路に本箱に立ち寄り、どのような本が並べられているのか、眺めた。以前に見た時と異なり、現在では10冊ほどの児童図書を除き全て文庫本だった。
 どのような経緯でこの本箱が設置されたのか、いったい誰がメンテナンスしているのか、少し気になり、池田市のホームページを探した。
 図書館関連の説明のところに「まち角の図書館」という欄があり「市内には、スチール製書架を街頭に設置した『まち角の図書館』があります。これは、皆さんから寄せられた“善意の本”を活用し、無人・無料・無施錠で、読みたい本があれば誰でも取り出して借りることができる、というものです」との説明とともに13ヶ所の設置場所が書かれていた。
 私が見たのは3号の書架でその所在場所の説明は「石橋『赤い橋』西詰め」とあった。「阪急『石橋』バス停横」というのや「旧大阪北部農協神田支店前」などという説明もあった。具体的な地番を表示するよりも、このような表示の方が市民にとって理解しやすいのだろう。市民目線の表示だと思ったことである。
 ちょっと調べた限りでは、この「まち角の図書館」を担当しているのは、市立図書館やこれに関連する組織ではなく、市の「環境にやさしい課」のようだ。市民有志によるリサイクル運動との連携活動のようである。本棚の補充、清掃や提供された書物を保管している倉庫の整理などは市民ボランティアが担当しているという。
 このような図書館活動もあるのだなあ、と蒙を啓かれた。
 と、ここまで書いてラケットボールのコートに向かった。練習試合の合間の休憩時間に、この「まち角の図書館」を話題にした。夙川から通っている1人を除きコートに集まっている仲間は全員池田市民である。どのような反応が返ってくるか、半分は野次馬根性であったが、ちょっと楽しみにしていた。
「ああ、そう言えばありますね」「本を借りたことはありません」というのが答だった。「あぁ~あ」。