翻訳書簡
タイトルに「『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅」とありますように、赤毛のアンの中の10行ほどの文章を選び、その翻訳についての俳優・上白石萌音さんと文芸翻訳家・河野万里子さんとの往復書簡の形をとったNHK出版の本です。
13回あるそれぞれの回で提示される英語の文章を、萌音さんが訳しそれを河野さんに届けます。河野さんは萌音さんの翻訳について優しく見守りつつ手ほどきし、コツを教え、言葉の選択や目線の置き方、表現の仕方などについて指導して行きます。その指導に従った萌音さんの再訳が示され、河野さんのコメントと河野さんの訳文が載っています。原文とこの3つの翻訳文を比較して読むことができるのですが、改めて翻訳家の「凄さ」を感じました。
13回あるそれぞれの回で提示される英語の文章を、萌音さんが訳しそれを河野さんに届けます。河野さんは萌音さんの翻訳について優しく見守りつつ手ほどきし、コツを教え、言葉の選択や目線の置き方、表現の仕方などについて指導して行きます。その指導に従った萌音さんの再訳が示され、河野さんのコメントと河野さんの訳文が載っています。原文とこの3つの翻訳文を比較して読むことができるのですが、改めて翻訳家の「凄さ」を感じました。
それぞれの回の最初に示される10行ほどの英語の文章の次には、受験勉強時代に使った問題集にあったように、少し難しい単語や特殊な単語の意味が語注として文章の下部に付され、更に文章の構成についても文のしくみの欄で文法的な説明が書かれています。「萌音さんと一緒に読者の皆さんも翻訳してみてください」とでも言っているようで、最初の2回分は真面目に取り組みましたが‥‥‥。
河野さんは翻訳について「外国語で物語を書いた海外の著者と、日本の読者のあいだに橋を架けるような仕事」「(翻訳に際しては)文字から浮かび上がってくる景色や人物を脳内でよく見て、想像して、その脳内映像を描写する」「『おもしろかったな』『いい本だったな』と思ってもらうには、日本語の力、それも表現力がとても重要」と書いています。
最終回の萌音さんの訳文について河野さんは「受験英語的表現から自由になって『日本語で普通に言うなら何て言う?』と『柔らかく考えてみましょう』、たとえば6歳のこどもに、噛みくだいて読んであげるつもりで」と教えています。そしてそれにもとづく萌音さんの再訳と河野さんの翻訳は次のとおりです。
やりがいのある仕事としっかりとした目標があり、気の合う友がいる。その喜びを今、知っている。なにより、生まれもった想像力と、夢見る理想の世界がアンにはある。そしてどんな道にも、曲がり角はあるのだ!
「神は天に在り、世はすべてこともなし」アンは、そっとつぶやいた。(上白石萌音訳)
「神は天に在り、世はすべてこともなし」アンは、そっとつぶやいた。(上白石萌音訳)
やりがいのある仕事、輝きつづける目標、心を分かちあえる友。いま、そのすべてがある喜びを、静かにかみしめてみる。なによりアンには、天から恵まれた想像力がある。夢のいっぱい詰まった理想の世界がある。それにどんな道にも、曲がり角はつきものではないか!
「『神、天にあり、世はすべて、こともなし』」アンはそっと、つぶやいた。(河野万里子訳)
なかなか凝った造りの本で、引用された英文の音声と萌音さんによる河野さんの日本語訳朗読が聞けるようで、そのためのQRコードが付されていました。