読みたくなるのを次々に借りて

読みたくなるのを次々に借りて

いまいまめ(2025年4月30日)

オキアミ

 わたしは大津市民ではなく、熱心な読書家というわけでもない伊丹市民で大変恐縮ですが、mucaさんからコラムを書いてみない?と言われて、この場をお借りさせていただきました。
 本はよく読む方ですが買うことは殆どなく、主に図書館で借りています。
 決して深い教養や知識の探究といった高尚な理由ではなく、好奇心を満たすだけのどこにも向かわない雑学を求めたり、気持ちを落ち着かせる物語を求めたりと、ひたすら自分のために本を読んでいます。難解な名著や、行間が狭く明朝体でみっちり文字が印刷されている本は必ず挫折するので、狭く浅くが私の読書スタイルです。

 私のような狭く浅い読者家は興味のあるジャンルを縦横無尽に読みたいので、図書館という存在は本当にありがたいのです。
 最初に司書さんの選んだおすすめの本が並んだコーナーをぶらついてから他の棚の間を見て歩き、今回はこのジャンルに挑戦してみようと考えたり、目についた本を片っ端から手に取ったり。自転車の前カゴを借りた本でいっぱいにし、しばらくは読み物に困らないぞとホクホクしながら帰路に着くのがささやかな幸せです。もちろん何冊かは挫折して、司書さんの手を煩わせるだけに借りたことになってしまいますが。ちなみに我が伊丹市の図書館で借り出せる冊数は、市内の全館合わせて30冊以内、貸し出し期間は3週間という太っ腹なルールで、伊丹市民で良かったと実感しています。

 前述したとおり、私は狭く浅い読書家なので、流行りの本も大好きです。図書館のサイトで予約の多い資料を検索して、読みたいなと思うものがあれば予約します。先日も、おそらくそういう予約をしていたと思う本が、利用可能になって借りることができました。なぜおそらくなのかというと、返却待ち状態が長かったので、何故予約したのかも忘れてしまっていたのです。もしかしたらビル・ゲイツがおすすめする本だったかもしれません。

 なんにせよミーハー心で借りたその本は、『動物のひみつ』という翻訳本でした。
 シドニー大学の教授が、オキアミから類人猿まで様々な動物の生態・行動を研究し、書き記した本です。
 驚いたことに700ページ以上もある本でした。測ってみたら厚さが4.3cmもあったので、カウンターで受け取った時、少々怖気づいたのが正直なところです。しかし、薄いピンクと青でまとめられた可愛らしい配色の装幀と、手書き風のタイトルが親しみやすく、動物の本なのに裏表紙のイラストはホモサピエンスというなんらかの強い主義主張が私の読書魂を突き動かし、えいやっと読み始めました。

 ページ数は多かったけれど、文体がカジュアルで、難しい学術的な言い回しはなかったので、サクサクと読み進めることができました。動物達が生存競争や子孫繁栄のために社会を形成しながら生きる様が描かれていて、なかでも南極に生息するオキアミの章が個人的に印象に残りました。人間の小指くらいのオキアミが、南極の生態系において需要な役割を果たす「キーストーン種」であること、南極の生態系の維持はもちろん地球温暖化を遅らせる力を持っていること、毎日多くのオキアミが生まれては食べられていくが、種としては人類よりも繁栄していることなど。他にも、アリやハチなどの社会性昆虫の振る舞いについての記述には、超個体について思いを馳せたりしました。倫理的にどうかはさておき、とりあげられた各動物の生存・繁殖における行動が理解できるあたり、人間(私)も動物なんだなぁ、と実感します。
 表現力が稚拙で、小学生並みの感想(いわゆる小並感)しか捻り出せませんが、情報と知識を目一杯詰め込んだこういう本に出会えるから、私は読書をやめられないのです。
 余談ですが、人気のある本なので次の予約も入っており、早く読了するため通勤鞄に入れて持ち歩いていたのですが、それなりの重量で肩に鞄の紐が食い込んで辛かったので、家で読む方がおすすめです。あと、片手持ちで700ページ強の本をめくるのは至難の技でした。