漢字問題集

漢字問題集

啓(2024年6月26日)

 かつてこの欄に「最近、ちょっとしたメモを取るときに漢字を正しく書けないことに気が付いた。『当たらずと雖も遠からず』程度の漢字が度々出現する。毎日、簡単な日記というかその日の行動を3年日記に手書きしている妻にはこのようなことはないらしい」、そこで「処分対象の本の中に、紛れ込んでいた『書き取り総合練習』との表題の100頁強の問題集を使って毎日1頁ずつ35~37問を解くこととした」という内容の文章を掲載いただいた。
 妻が付き合ってくれたお陰だろうか、三日坊主の私には珍しくほぼ毎日行い、結果的には第一問から最終問まで解くことを 10 回繰り返した。 10 回全てで間違っている熟語(例えば「カンゲン」よろしきを得た指導)や訓読みの漢字(例えば「センスイカン」は正しく書けるのに「ヒソむ」とあると「ン?」となる)があったのには、我ながら呆れた。それまで正しく書けていた漢字をある時突然に思い出せないことも何回かあったが、これは歳の所為だろう。また、迷ったときに何も考えずに手を動かすと自然に正しい漢字になっていることもあった。「頭は忘れても手は忘れない」ということか。
  2022 年に掲載戴いた文章は「ほとんどの漢字が正しく書けるような日は来るのだろうか」で終わっているが、結論ははっきりと出ている。「百年河清を俟つ」、これが結論だろう。
 10回も繰り返すと流石に飽きてきたので、1年ぶりに大阪市内へ出たついでに大型書店に立ち寄り、適当な漢字書き取りに関する受験問題集を探した。購入したのは河合塾SERIES「入試漢字マスター 一八〇〇プラス」(河合出版)である。半世紀以上も前の私の受験勉強時代と異なり問題集の紙質もよく、印刷も綺麗である。現代の若者は当然だと思っているのだろうが、それぞれの問題に対する答が問題の頁の下部に赤字で印刷され、それを隠す目的の赤色のプラスティック・シートが付されているのにも老人はその工夫に驚いている。かつては最終頁に纏められた解答欄をいちいち参照していた。
「企業は利益をツイキュウする」「医者たちはその病気の原因をツイキュウした」「国会で大臣の責任がツイキュウされた」などを同時に並べているのは、受験問題集ならではの配慮あるいは知恵であろう。そしてこの問題を解いた受験生は「追求」「追究」「追及」をきっちりと覚えるだろう。
 同音異義語の選択は難しい。私はこの文章をパソコンを使って作成しているが、その際に変換対象候補として現れる漢字の選択に戸惑う場合がある。そのようなときには辞書を引き確認することとしているのだが、無意識に適当にそれらしき漢字を選んでいることも多い。中には間違った漢字や熟語に変換したまま完成原稿としているのもありそうだ。
 私が最初に使った問題集は昭和62年発行のものだが、そこに選ばれている短文の中には、例えば「男子誕生とはケイガである」「男勝りのキジョウな母」「男はドキョウ、女は愛敬」など現代では不適切とされる、あるいは検討を求められるようなものもあったが、新しく購入した問題集ではこの点は十分に配慮されているだろう。
 このようなことを思いつつ、のんびりと、しかし真剣かつ真面目に頭の体操をしている。漢字も少し上手に書けるようになったかも知れない。