不思議な図書館

不思議な図書館

林知子(2025年6月25日)

不思議図書館

 湖西の木戸集落、琵琶湖が見える県道沿いに「不思議な図書館」ができたのは、この春先のことだった。「図書係さゆみ」と名付けたインスタグラムの紹介欄を読むと「不思議な図書館、本と音、実験音楽、レコード試聴、図書空間等」とあり「京都から滋賀へ移転」とある。
 この建物は、もとは建築会社の物でリフォームが始まってオレンジの屋根と濃い青の壁だったので、一体どうなるのかと思っていた時だった。

 この地には小さな図書館らしき物がいくつかある。新しいのはどんな物かと珍しくて早速行ってみた。
 一階は古本を売るコーナー、本に関係する小物も並んでいる。キャラクターの人形もある。キャラクター絵のTシャツもぶら下がっていた。
 二階に行ってみると驚きの連続。部屋の奥にはレコード用品ずらり。大きなスピーカーがあり、レコードが棚に溢れていた。椅子やソファーも並んでいる。図書館だから本もいっぱいのはず。側面の本棚に本がぎっしりだ。が、私のなじみの無い本いっぱい。「ハリーポッター」があったが、私は苦手とする本だ。

「私ね。図書館には行かないのです。だって、私の読みたい本がないもの」
とオーナーさゆみさん。本好きで図書館に行かない人もいるのだと思った。

「〈わたし〉はどこにあるのか ガザ二ガ脳科学講義」「そろそろタイムマシンで未来へ行けますか」「もっと ドーバーミンの農最新科学」
などが並んでいた。全部、自分で買って置くとのこと。また、小さい頃から父親が買ってくれた物もありますということだった。
 この不思議な図書館の利用者は、なぜか、二〇代から四〇代の男性の比率が98パーセントとか。レコードを聴いて語り合い、本を静かに読んでいく時間の提供ですと。以前、京都店ではカフェもやっていたが、本も読まずレコードも聴かなく、カフェの珈琲を飲んでおしゃべりは自分の趣旨に合わないと思いやめたとのことだ。

 この滋賀の地の開店日は週三日。さゆみさんは、法人の不動産業の専任宅地建物取引士を本業をとしていて、その他様々な国家試験を取った方なので今はそれだけの開店日らしい。
 おもしろい試みとしては、キッチンカーならぬブックカーでイベントに行くことだ。本を車につんてイベント会場のスペースで本を読んで貰うとのこと。移動図書館である。
 この不思議な図書館の別棟には、金属楽器を作る方の工房がある。これも何ができるだろうと横を通りながら見ていたが、そういう工房だとは驚いた。
 先日、この二階で演奏会があった。滋賀だけでなく、他県からも参加者がいっぱいだったようだ。
 この田舎にこんな図書館ができたなんて、まさに「不思議」だ。