「酒について(ON DRINK)」
楽しそうな食堂とそこで提供される美味しそうな料理を舞台にした「食堂のおばちゃん」の後は、お酒の話はどうだろうかと思い、つい最近読んだキングズレー・エイミス著、吉行淳之介・林節雄訳の「酒について」(講談社)を取り上げることとしました。
この本を知ったのは、私のおぼろげな記憶によりますと、半世紀以上前です。当時私が熱心に読んでいた誰かの本の中で激賞されていたのを覚えています。そこで古書店巡りの際に気を付けていて入手したと言うわけです。入手したものの忙しい仕事に紛れ読むことなく時間だけが経過しました。とは言うもののその当時でも本はかなりの量を読んでいました。しかし、そのほとんどは気楽に読める、多くのサラリーマンが読んでいた時流に沿った一過性の新書版の書物と国内外の推理小説が中心だったように思います。
その結果、エイミスのこの本は私の手に取られることもなく書棚の2等席にそのまま長年の間置かれていたということになりました。処分する前に一度目を通そうと思い読み始めましたが、とても興味深く、なぜ買って直ぐに読まなかったのか、今では少し後悔をしています。結果的にはこの本は残す本の棚に置かれることになりました。
最近では「飲むのはビールと少しのワインだけ」になってしまった私が、今になってお酒についての本を取り上げ、何かを書くことになったのは私にとって皮肉というか残念なことです。
例えば、一番最初に現れる吉行マークでは「酒についてのエイミスの基本的姿勢を知ってから、この本を読むほうがよいと思うので、とりあえず、私の「後書き」を読んでから、本文にとりかかってもらいたい」と書き、5頁に亘る「後書き」では「これは不思議な本である。200頁ほどの本なのに、ワインやカクテルのことはもちろん、……実用記事としても役立つ事柄がイギリス流のユーモアを随処に混えて書かれている」「……酒と人類との関係という基本的な問題にはじまって……さらに、二日酔や酒を飲みながら肥らずに済ます方法や‥‥‥」「‥‥‥ところでこの本はやはりかなりハイブラウなもので、最初は取りつきにくいかもしれない。したがって、興味のないところは飛ばして、まず拾い読みすることをおすすめする」と懇切丁寧です。
例えば「飲み過ぎないための方法」では最初に「欠席してしまうこと」「酒を何かで割って飲むこと」と書き、「飲む時に疲れていないこと、気持ちが沈んでいないこと、特別の高揚状態にないこと」と体と心とアルコールの関係を愉快に、そして真面目に論じています。これらの考えは私もそのとおりだと思いつつ「しかし、それができないのだから飲み過ぎてしまうのだ」と読み進めました。
この本を知ったのは、私のおぼろげな記憶によりますと、半世紀以上前です。当時私が熱心に読んでいた誰かの本の中で激賞されていたのを覚えています。そこで古書店巡りの際に気を付けていて入手したと言うわけです。入手したものの忙しい仕事に紛れ読むことなく時間だけが経過しました。とは言うもののその当時でも本はかなりの量を読んでいました。しかし、そのほとんどは気楽に読める、多くのサラリーマンが読んでいた時流に沿った一過性の新書版の書物と国内外の推理小説が中心だったように思います。
その結果、エイミスのこの本は私の手に取られることもなく書棚の2等席にそのまま長年の間置かれていたということになりました。処分する前に一度目を通そうと思い読み始めましたが、とても興味深く、なぜ買って直ぐに読まなかったのか、今では少し後悔をしています。結果的にはこの本は残す本の棚に置かれることになりました。
最近では「飲むのはビールと少しのワインだけ」になってしまった私が、今になってお酒についての本を取り上げ、何かを書くことになったのは私にとって皮肉というか残念なことです。
この本には頁の下部にマークが付された幾つかの注が書かれています。その注については前書きでこの本には異なった四つのマークが付されており、それぞれは「註解マーク」「エイミス・マーク」「林マーク」「吉行マーク」であると説明されています。後三者は著者、訳者が付したものです。これらのマークで書かれている短文も興味深いものです。
例えば、一番最初に現れる吉行マークでは「酒についてのエイミスの基本的姿勢を知ってから、この本を読むほうがよいと思うので、とりあえず、私の「後書き」を読んでから、本文にとりかかってもらいたい」と書き、5頁に亘る「後書き」では「これは不思議な本である。200頁ほどの本なのに、ワインやカクテルのことはもちろん、……実用記事としても役立つ事柄がイギリス流のユーモアを随処に混えて書かれている」「……酒と人類との関係という基本的な問題にはじまって……さらに、二日酔や酒を飲みながら肥らずに済ます方法や‥‥‥」「‥‥‥ところでこの本はやはりかなりハイブラウなもので、最初は取りつきにくいかもしれない。したがって、興味のないところは飛ばして、まず拾い読みすることをおすすめする」と懇切丁寧です。
「酒飲みのための文献」「どの料理にどの酒を飲むか」「二日酔」「飲み過ぎないための方法」などのタイトルを順不同に読んだのですが、それぞれに諧謔を含んだ深い学識、教養に裏打ちされた文章が溢れています。
例えば「飲み過ぎないための方法」では最初に「欠席してしまうこと」「酒を何かで割って飲むこと」と書き、「飲む時に疲れていないこと、気持ちが沈んでいないこと、特別の高揚状態にないこと」と体と心とアルコールの関係を愉快に、そして真面目に論じています。これらの考えは私もそのとおりだと思いつつ「しかし、それができないのだから飲み過ぎてしまうのだ」と読み進めました。
そして結論として「さて――もし君が正気を失わないでもう少しマシに振舞いたいと望むなら、絶対確実なたったひとつの方法は、飲む量を減らすことしかない。だが、そんなことをどうやって実行するかとなると、それは私の手に負えることではなく、エキスパート中のエキスパートというやつでも見つけてこなければなるまい」と書き本書を終えます。私もそのとおりだと心の中で賛成し、本書を閉じました。