「54字の物語X」
図書館の新着本コーナーに発行直後のこの「 54 字の物語 X 」が置かれていた。副題には「意味がわかるとゾクゾクする超短編小説」とある。発行所は PHP 研究所、著者は氏田雄介氏。
大きな活字で書かれた6行×9字= 54 字に収められた 90 の物語と200字前後の文章による解説文から構成されており、物語が書かれた頁の裏に当たる頁にそれぞれの解説が置かれている。
読者は短い物語を読んで、自分の頭でその意味を考える。次に作者による解説を読んで、もう一度物語に含まれる意味を考えて欲しい、ということか。
この本を手に取った最初の感想は「へえー、こんな本があるんだ」「これも SNS に代表される最近の短い文章による情報提供の申し子か」というものだったが、結構面白い。しかし軽い内容の文章が多い。
「アンドロイド殺し」という物語がある。54文字で書かれたその内容は「アンドロイドに感情なんてない。だから殺したって問題ない。ただ機械を壊しただけ。罪悪感を抱くヒツヨウナドナイ」である。そしてその解説文は「アンドロイドを殺しても問題ない、と言っているこの人物は何者でしょうか。いくらアンドロイドといえども、壊す時に罪悪感がない、ということはこの人物自身も感情を持たないアンドロイドなのかもしれません。それとも、自身の感情を押し殺し続けた結果、アンドロイドのようになってしまった人間なのでしょうか……?」
確かに技術の進歩により感情を持たない「人造人間(アンドロイド)」のような人間が生まれてくる可能性もありそうだ。
「 ABC 殺人事件」では「相田、遠藤、そのあと江藤が殺された。五十音順に狙われているようだ。私は『深田』だからまだ……誰か来たようだ」とあり、実は五十音順ではなくアルファベット順だった、と謎を解く。
私たちは何かの法則を考えるときアルファベット順を横に置き、無意識に五十音順やいろは順を考える。
たまたま目に留まったこの二つから私は、なんとなく作者はアガサ・クリスティーのファンであり「アクロイド殺し」や「 ABC 殺人事件」が念頭にあったと推測しているのだが。深読みかも知れない。
その他「定着」では「キャッシュレスも当時は抵抗があったけど、今は当たり前のことでしょ?肉体を持たない生活だって慣れれば便利だよ」と書き「……未来の世界では、さらに肉体を捨ててバーチャルな空間で暮らす世界に。肉体を捨てるなんて、今は考えられませんが、キャッシュレス生活と同じように、いずれは慣れてしまうのかも……?」との恐ろしい予言も。
相対的幸福では「幸福度が数値化されるようになって早一年。俺の幸福度はたったの3%。だが問題ない。他の人はマイナス値ばかりだ」と書きつつ「いっそ数値化をやめれば、みんな少しずつ幸せになっていくかも知れませんね」となんでも数値化をすることに対する問題点に触れる。
「AI政治家が登場し、意思決定がスピーディになった。ときどき国会中にスリープモードになってしまうのが難点だが」には笑った。
裏表紙には「シリーズ 10 巻目となるこの本のテーマはSF(すこし不穏)。世界の終わり、変な動物、未来のテクノロジーなどダークで非日常的な話が盛りだくさん。……」とあったが、確かに著者の言うとおりの書物だった。なお、お粗末なことだがタイトルの X が 10 を意味することはこの裏表紙で気が付いた。
大きな活字で書かれた6行×9字= 54 字に収められた 90 の物語と200字前後の文章による解説文から構成されており、物語が書かれた頁の裏に当たる頁にそれぞれの解説が置かれている。
読者は短い物語を読んで、自分の頭でその意味を考える。次に作者による解説を読んで、もう一度物語に含まれる意味を考えて欲しい、ということか。
この本を手に取った最初の感想は「へえー、こんな本があるんだ」「これも SNS に代表される最近の短い文章による情報提供の申し子か」というものだったが、結構面白い。しかし軽い内容の文章が多い。
「アンドロイド殺し」という物語がある。54文字で書かれたその内容は「アンドロイドに感情なんてない。だから殺したって問題ない。ただ機械を壊しただけ。罪悪感を抱くヒツヨウナドナイ」である。そしてその解説文は「アンドロイドを殺しても問題ない、と言っているこの人物は何者でしょうか。いくらアンドロイドといえども、壊す時に罪悪感がない、ということはこの人物自身も感情を持たないアンドロイドなのかもしれません。それとも、自身の感情を押し殺し続けた結果、アンドロイドのようになってしまった人間なのでしょうか……?」
確かに技術の進歩により感情を持たない「人造人間(アンドロイド)」のような人間が生まれてくる可能性もありそうだ。
「 ABC 殺人事件」では「相田、遠藤、そのあと江藤が殺された。五十音順に狙われているようだ。私は『深田』だからまだ……誰か来たようだ」とあり、実は五十音順ではなくアルファベット順だった、と謎を解く。
私たちは何かの法則を考えるときアルファベット順を横に置き、無意識に五十音順やいろは順を考える。
たまたま目に留まったこの二つから私は、なんとなく作者はアガサ・クリスティーのファンであり「アクロイド殺し」や「 ABC 殺人事件」が念頭にあったと推測しているのだが。深読みかも知れない。
その他「定着」では「キャッシュレスも当時は抵抗があったけど、今は当たり前のことでしょ?肉体を持たない生活だって慣れれば便利だよ」と書き「……未来の世界では、さらに肉体を捨ててバーチャルな空間で暮らす世界に。肉体を捨てるなんて、今は考えられませんが、キャッシュレス生活と同じように、いずれは慣れてしまうのかも……?」との恐ろしい予言も。
相対的幸福では「幸福度が数値化されるようになって早一年。俺の幸福度はたったの3%。だが問題ない。他の人はマイナス値ばかりだ」と書きつつ「いっそ数値化をやめれば、みんな少しずつ幸せになっていくかも知れませんね」となんでも数値化をすることに対する問題点に触れる。
「AI政治家が登場し、意思決定がスピーディになった。ときどき国会中にスリープモードになってしまうのが難点だが」には笑った。
裏表紙には「シリーズ 10 巻目となるこの本のテーマはSF(すこし不穏)。世界の終わり、変な動物、未来のテクノロジーなどダークで非日常的な話が盛りだくさん。……」とあったが、確かに著者の言うとおりの書物だった。なお、お粗末なことだがタイトルの X が 10 を意味することはこの裏表紙で気が付いた。