イギリス大好き書誌学者が書いた本
図書館から借り出した「『どこへも行かない』旅」(光文社)の著者である林 望さんは、私にとってはエッセイスト、書誌学者であり、リンボウ先生と言われている人物、同時にイギリスが大好きな人物で「イギリスはおいしい」(平凡社)、「イギリスは愉快だ」(平凡社)「イギリス観察辞典」(平凡社)の著者であること程度の理解だった。イギリス関連のこれら書物は手元にあり折に触れて楽しく読んでいた。
ところがあるとき著者の別の側面を知ることとなった。著者はインタビューに答えて自らの大仕事について「ひとつ目の大仕事は、 30 代のときに手掛けた『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』、ふたつ目の大仕事は、 50 代の前半を費やして完成した『薩摩スチューデント、西へ』(光文社)という歴史小説(維新前夜 1865 年に薩摩藩が極秘裏にイギリスへ送った俊英留学生 15 人と秘密使節4人の群像劇)、そして、みっつ目は『謹訳 源氏物語』という大仕事」と発言している。
全て私の全く知らない業績だった。
この「『どこへも行かない』旅」は指南編、実践編と別れ、指南編では「観光しない観光」「私の歩き方」「見知らぬ町へ」の3項目で著者の意見を書き、実践編では日本の町について 36 項目、イギリスについて 13 項目の数頁の文章が書かれている。
それぞれに面白いが、私は「私の歩き方」中の「宿を探す」をとても興味深く読んだ。イギリスでもっとも普通の宿としてのB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)について、いろんな意味でのいい宿の探し方の考察は、本題を離れてイギリスと言う国の具体的なイメージを知ることもできる文章で溢れていた。
例えば
ところがあるとき著者の別の側面を知ることとなった。著者はインタビューに答えて自らの大仕事について「ひとつ目の大仕事は、 30 代のときに手掛けた『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』、ふたつ目の大仕事は、 50 代の前半を費やして完成した『薩摩スチューデント、西へ』(光文社)という歴史小説(維新前夜 1865 年に薩摩藩が極秘裏にイギリスへ送った俊英留学生 15 人と秘密使節4人の群像劇)、そして、みっつ目は『謹訳 源氏物語』という大仕事」と発言している。
全て私の全く知らない業績だった。
この「『どこへも行かない』旅」は指南編、実践編と別れ、指南編では「観光しない観光」「私の歩き方」「見知らぬ町へ」の3項目で著者の意見を書き、実践編では日本の町について 36 項目、イギリスについて 13 項目の数頁の文章が書かれている。
それぞれに面白いが、私は「私の歩き方」中の「宿を探す」をとても興味深く読んだ。イギリスでもっとも普通の宿としてのB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)について、いろんな意味でのいい宿の探し方の考察は、本題を離れてイギリスと言う国の具体的なイメージを知ることもできる文章で溢れていた。
例えば
古農家の建物、イクスムーア(デヴォン北部の美しい原野)周縁部に位置する申し分のない立地。広々とした快適な客室を七部屋提供。そのうち三室は立派なお風呂場付き、全室近代的設備完備。各部屋眺望絶佳。自家栽培の素材による美味しい料理、焼き立てのパン。健康食志向のベジタリアン。なおオーナーのストラットン氏はシェフである。……
などと言う文章を読むと、自動車でしか辿り着けない場所にあるに違いないが、ここを訪れ、数日間ここに泊まり、のんびりとイギリスの田舎を楽しみたい、と思ってしまう。しかも大事なのは、これらが信頼できる記述だということである。
実践編の日本の項では、川瀬巴水(大正から昭和の初めにかけて、数多くの風景版画の傑作を描いた版画家)の風景を求めて霞ヶ浦を訪れる話や宮崎から大分のほうへ少し北上した海岸にある美々津という港町(神武天皇東征のお船出の古港だそうだ)での食事を巡る地元のオカミサンとの交流などのなんとはない文章を読みながらなにか懐かしい心地がした。
また、収められている写真の多くは、その場所に実際に行ったこともない私ではあるが、古き良き時代の日本のそこかしこにあっただろう風景を感じさせてくれた。
このようなことを思いながら読んだのだが、著者の文章について作家・評論家の丸谷才一は著者のある著作の解説で「……そこでは和漢洋にわたる教養と学識が悠々たる世界を形成している。わたしはとりわけ、彼がイギリスについて語った文章を好む。精神がいきいきと反応して、未来に向かってゐるやうな気がするからである」と書いている。
この本を読み終わったので次は、著者が大仕事と発言した「薩摩スチューデント、西へ」を読んでみようかと、図書館の蔵書を検索した。そう言えば、今読んだ本の中にロンドン・ブルームズベリーの古書店で「薩摩の一行がロンドンまでの航海中に立ち寄ったアジア・アラブ各寄港地の古い地図やら写真やら絵図やらを一財産傾けるほど」買った話が書かれていた。
実践編の日本の項では、川瀬巴水(大正から昭和の初めにかけて、数多くの風景版画の傑作を描いた版画家)の風景を求めて霞ヶ浦を訪れる話や宮崎から大分のほうへ少し北上した海岸にある美々津という港町(神武天皇東征のお船出の古港だそうだ)での食事を巡る地元のオカミサンとの交流などのなんとはない文章を読みながらなにか懐かしい心地がした。
また、収められている写真の多くは、その場所に実際に行ったこともない私ではあるが、古き良き時代の日本のそこかしこにあっただろう風景を感じさせてくれた。
このようなことを思いながら読んだのだが、著者の文章について作家・評論家の丸谷才一は著者のある著作の解説で「……そこでは和漢洋にわたる教養と学識が悠々たる世界を形成している。わたしはとりわけ、彼がイギリスについて語った文章を好む。精神がいきいきと反応して、未来に向かってゐるやうな気がするからである」と書いている。
この本を読み終わったので次は、著者が大仕事と発言した「薩摩スチューデント、西へ」を読んでみようかと、図書館の蔵書を検索した。そう言えば、今読んだ本の中にロンドン・ブルームズベリーの古書店で「薩摩の一行がロンドンまでの航海中に立ち寄ったアジア・アラブ各寄港地の古い地図やら写真やら絵図やらを一財産傾けるほど」買った話が書かれていた。