我が故郷の図書館

我が故郷の図書館

林知子(2015年7月8日)

 田舎育ちの私が、初めて「図書館」という「本の館」に出会ったのは、高校生になってからでした。5月に国宝に指定された松江城。昭和40年頃は松江城内二の丸跡地に県立図書館がありました。木立に囲まれて、お堀の水面を眺めて読書する静かなひとときに魅了されて、時々通いました。木造の建物にも心地良さを感じました。
 受験間近の2月のお昼前。3年生は受験のためのお休み日。友人とともに図書館学習室で受験勉強をしました。勉強に疲れると三の丸付近まで散歩。と、

「ねえ。あんたたち、何をしちょうのー?」
 振り返ると制服姿の婦警さん二人。
「何って? あの勉強?」
 その途端、矢次ばやの質問が私たちの頭の上に降りかかってきたのです。
「勉強? 今日は○曜日だよ、学校があーじゃないの?(あるじゃないの)」「さぼったの」「どげしたん?」「何でこげんとこ歩いちょうのー」「私服だよね。学校どこなのー」

 振り返って考えると不思議なこと。なぜ、ここにいる訳をきちんと説明できなかったのか。警察官に呼び止められたこと、その制服の威圧感だったのでしょうか。おどおどと説明し、やっと解放された私たちは、学校へ逃げ帰り、担任にその報告をしました。
「ははー。補導されたんかー図書館でー。ワルに見えたんだろうなぁ。アッハッハ」
 補導だって?『補導とは、非行の深化を抑止するために適切な措置を講ずること』

 なるほど。ということは。私たちは、婦警さんのおかげで『非行の深化が抑止され』これまでの人生を送ってきたのです。図書館と言うと、時々この話を思い出します。

 その後、お城の堀の横に移設され新しい建物として昭和43年に竣工。地上2階、地下2階鉄筋コンクリート造り、収容冊数583,000冊の図書館です。滋賀県立図書館には到底及びません。でも、窓から国宝を眺めて読書もおつなもの。城と図書館は似合っています。