図書館がムラに来た

図書館がムラに来た

K・M(2015年7月22日)

 つとむくんにとって、きょうは待ち遠しい日です。それは2時間目の休み時間に、町から車にたくさんの本を乗せた「移動図書館さくら号」が、学校に来る日だからです。さくら号は、25分の休み時間に中庭に停まると、大きな扉をあけてくれます。
「わーあ、いいにおい」
 つとむくんは、新しい本のにおいが大好き。さくら号のおねえさんとおにいさんが、机を持ってきて、本を並べてくれました。
「さあ、きょうは、新しい本もたくさん持ってきたよ」
 さくら号の周りには、1年生から6年生までのみんなが集まってきました。
 3年生のつとむくんは、友だちのみっちゃんに助けてもらって、本をさがします。つとむくんは、足が悪いのです。だから大勢のみんなが集まるとどうしても、遅れて後ろのほうになってしまいます。
「つとむくん、『モチモチの木』あったよ!これでいい?」
 みっちゃんが、もぐりこんでつとむくんの読みたい本を探してきてくれました。
「ありがとう、前から読みたかったんだ」
つとむくんは、何度も何度もみっちゃんにお礼を言いました。
 家に帰ると、さっそく宿題をしました。早くやってしまわないと本を読む時間がなくなるのです。夕方はテレビも見たいし、本も読みたいし…つとむくんは困ってしまうからです。
「えらいねえ、きょうは宿題をすぐにやるから…」
 おばあちゃんの声です。おばあちゃんは、つとむくんがみんなと外で走り回って遊ぶことができないことを一番よく知っています。つとむくんは、宿題を終えると、すぐに借りてきた本を読み始めました。おばあちゃんは、そんなつとむくんを見て、
「そんなに本を読むことはおもしろいかえ」
と目を細めて言います。「うん、おもしろいよ。本大好き!」
つとむくんの笑顔におばあちゃんは、
「私もつーくんと一緒に本を読みたいねえ」
と言いました。
「ほんと? ばあちゃんもよみたいの? だったら今度借りてきてあげる」
つとむくんの目がキッとなりました。
 次の年の春、おばあちゃんのムラの区民会館に一か月に一回「移動図書館かえで号」が来ることになったのです。ムラのみんなは大喜び。お父さんも
「これからは、つとむと一緒に本が読めるからいいなあ」
とうれしさでいっぱいでした。
 それは、つとむくんが、図書館のおねえさん宛てに「おばあちゃんのおねがい」という手紙を書いたことがきっかけになって始まった移動図書館車だったのです。
 図書館のおねえさんやおにいさんたちが、つとむくんの手紙を読んで、図書館のみなさんで話し合って決めたことだと後でわかりました。
 つとむくんが、担任の真知子先生に、
「おばあちゃんが、本を読みたいっていっているけど、どうしたらいいかなあ」
と相談すると、真知子先生は
「すてきなおばあちゃんね。クラスのみんなに相談して、おばあちゃんのところにも、移動図書館が来ることをお願いしようか」
と応援してくれたのでした。校長先生も、一緒に手紙を添えてくださいました。
 きょうも移動図書館かえで号は、たくさんの本を乗せて、ムラからムラへと巡っています。