小さな小さな本棚

小さな小さな本棚

KEI(2017年2月8日)

 図書館の定義には全く当て嵌まらず、またどのように拡大解釈しても個人文庫とも言えない、小さな小さな本棚の話である。
 会社をリタイアしたのを機に、書籍の処分を始めた。この時に、子供たちが小学校在学中に読んでいた本が幾つかの段ボール箱に詰められて書庫の片隅に残されているのに気が付いた。
 中味を見ると、さすがに絵本はなかったが、シリーズで発行されていた偉人伝、ちょっと背伸びをすれば小学生でも読めそうな単行本、親の私も愛読していた那須正幹さんの「ズッコケ三人組」や漫画「ドラえもん」などがぎっしりと詰まっていた。処分しようとする私に、妻が「孫たちが読むかも分からないから、捨てないように」と言った。
「それもそうだ」と納得したが、同時に、両親が新刊書を買ったり、図書館で借り出したりしてそれぞれの子供たちに与えようとするだろうから、何十年も前の古びた本を孫たちが手に取る筈はない、とも思った。
 そこで「物は試し」との気持ちで、私の書斎にあった小さな小さな本棚を、リビングに持ち込み、そこにこれらの本を並べた。家にやってきた孫たちには「ここにある本は、昔、(あなたがたの)お父さんやお母さんが読んだ本だよ」という程度の説明はしたと思うが、後は何も言わなかった。
 我が家に顔を出した孫たちは、この小さな本棚から適当な本を勝手に取り出しソファに寝そべって読んだり、続きを読むべく「持って帰ってもいい?」と聞き持って帰ったりした。孫が手に取った本を見て、親が「これは面白かった」というような説明をしていることもあった。
 このようなことが続いた後、つい先日、小学校6年生が、比較的小さな活字のシャーロック・ホームズ物語3冊を持って帰って、小さな小さな本棚の蔵書は偉人伝数冊を残すだけになった。妻に「これらの人は人気が無いんだね」と言うと、「みんな読み終えているよ」との答だった。そこでこれらは処分することとした。
 空になった本棚を眺めながら、私は「さて、次はどのような書物を並べようか」と考えている。