江戸古地図

江戸古地図

KEI(2022年7月20日)

 捕物帳について「明治以来の近代化のなかで生まれた日本独自の文学ジャンル」と書かれているのを読んだ記憶がある。そのようなことは知らなかったが岡本綺堂の「半七捕物帳」や野村胡堂の「銭形平次捕物控」などの幾つかは中高生の頃に読んだようだ。
 これら捕物帳には歳時記や有職故実が取り入れられていてそれが魅力の一つとなっていた。また、これらを読むことにより風物詩あるいは江戸情緒を感じていたのかも知れない。
 私の薦めもあり、いま妻は平岩弓枝さん描くところの江戸末期の旅籠「かわせみ」を舞台にした人情捕物帳というか人情話を楽しんでいる。「御宿かわせみ」(文春文庫)全34巻の半ばまで読んだようだ。
 しかし、人生のほとんどを関西で過ごした妻には文中に現れる地名やその位置関係さらにはその間の距離感覚がピンと来ないようだ。ときどき私に質問の矢が飛んでくるが私も漠然とした答えしかすることができない。江戸の切絵図でもあればいいのだが、このようなものは手元にない。
 手元にある帝国書院発行の「大きな文字の地図帳」には、東京中心部の詳細な地図が2頁見開きで掲載されており「御宿かわせみ」に出てくる幾つかの地名も記載されている。
 しかし、これでは十分とは言えない。そこで図書館へ出向き「切絵図・現代図で歩く江戸東京散歩」(人文社)を借り出した。見開きの左の頁には絵図が、右の頁にはそれに相当する現在の地図が掲載されている。
 十分とは言えないが、幾つかの頁を繋ぎ合わせて眺めれば、それぞれの位置関係やその間の距離もある程度推測できそうだ。「御宿かわせみ」の舞台になっている場所が含まれている頁を適当にコピーした。
 今後、妻は私への質問に先立ってこれで調べてくれるだろう。が、文庫本の最初の頁に、文中に現れる場所についての簡単な地図を描いておいてくれればよかったのに。
 余談だが、妻は読んだ一編である「びいどろ正月」の稿の中の「冬のはじめから、江戸は悪い風邪が流行(はや)り出した。・・・風邪をひきたくなかったら、ひたすら、嗽(うがい)をすることです。番茶の出がらしをよく煮出して、そいつで念入りにがらがらとやる。外から帰って来た時は必ずですよ。手をよく洗い・・・」との主人公の友人の医者の発言を私に教えてくれ、「今と同じね」と言った。