「星に願いを」

「星に願いを」

M・M(2025年7月16日)

花山天文台

 福音館のかがくの本。こどもからおとなまで。このロングセラー本「立体で見る[星の本]」を手にとる。

 この作品は、「赤」と「青」のメガネを使って、宇宙の何千もの星を立体的に見る世界で初めての本です。星は、ページの上では「赤」と「青」の二重に印刷されていますが、立体メガネをかけてみると、なんとひとつに結び付いて全天88星座が3Dで浮かび上がってきます。

 制作に約10年。1986年に刊行以来長く読み継がれてきたロングセラーです。

 制作当時、星の温度や質量、そして星がどんな物質でできているのかは、かなり解明されていましたが、星までの距離を出すのは簡単そうで実は一番難しいことでした。それを様々な測定方法で計算されたのが、天体物理学者の北村正利さん。そして、その測定結果を基にしながら具体的に3Dのデザインに落としていったのが、世界的グラフィックデザイナーの杉浦康平さんでした。このお二人の長年の緻密な作業で生まれたのが『立体で見る[星の本]』です。
福音館書店 

 立体メガネをあて、本の中の星を見る。ヘルクレスの手がへびの頭にのびている。今にも動き出しそう。天の川銀河の中心部、いて座を見る。星座のかたちは繊細な線で柔らかく丁寧に結ばれて描かれ、眺め飽きることがない。奥行きがあるので、星は浮き上がりその背後に星座のかたちが見えてくる。大人も楽しめる。窓ぎわから流れる風が涼しく時間がたつのもわすれて魅入る。

 ある天文台の宇宙シアターで3D動画を観た。
こちらは立体メガネをかけ、地球から離れて全宇宙を観せてくれる。天の川銀河の様子は、帯状の姿が川のようだ。宙に放り出されたような感覚で浮遊している。果てしない…
 天文台本館で説明を受けた時の「スケッチは大切です」。立体の本の星座をスケッチしようと思った。

 天文台本館から庭を通り、3Dシアター室を通過する時にデモンストレーションのようすを思いだした。それは今も月にいるSORA-Q(=愛称 直径8センチの変形型小型ロボ)のことだ。その時、私は米国ドキュメンタリー映画「おやすみ オポチュニティ」の火星探査車(Oppyの愛称)が浮かんだ。彼(彼女)は運用期間90火星日をはるかに超えてほぼ15年火星探査を行った。地球の担当科学者とのやりとりはほのぼのとした映像でぬくもりがあった。3Dシアターの担当者は「次世代の方に回収をお願いしたい」と若い見学者にむけて話しておられた。

 私が宙を見る時は、その果てしない世界を想像してではなく、ささやかな願いをかなえてほしい時。

 今夜も星を眺めて願いを祈る。