あたらしい娯楽?
前回に続き川添 愛氏の「言語バーリ・トゥード」より一文。
同書125頁から始まるテーマは「あたらしい娯楽を考える」であり、雑誌「散歩の達人」に触発されて「変な文探し」を開始したことを書いている。
開始するにあたっての心得というかルールについて最初に思いを巡らし、「個人がするうっかりミスや間違いを対象にしないこと」「『人目に触れることを前提に作られている文』を対象にすること」と対象表現の範囲、範疇を限定した態度は、長年法律に付き合ってきた私には極めて合理的な思考と映る。
このルールに基づき著者が採集した「変な文」は
〇「カワイイはつくれる!」(花王)
〇「遠い国の女の子の、私は親になりました」(プラン・インターナショナル)
〇「パンにおいしい」(よつ葉バター)
〇「海老名市最高層を、住む」(小田急不動産)
であり、言語学者として、いろいろと考察を巡らせている。書かれている内容はとても興味深かったが、正直に言って私には難解な解説だった。
この文を読んで、かつて私が散歩の途中で見た二つの変な文章を思い出した。
その一つは、市立図書館本館へ連なる道の途中にある広大な空き地の囲いの傍にあった「関係者以外は無断で立入りを禁ずる」という語句と管理している会社の名前が書かれ、要所要所に設置された立て札である。
この横を通るたびに、「この文章の間違いを見つけ、正しい表現に直しましょう」とでもすれば、小学生の国語の問題に最適ではないかといつも思っていた。どうして「関係者以外の無断立入りを禁ずる」あるいは「関係者以外が無断で立ち入ることを禁ずる」と書くことができないのか。
二つ目は、我が家の近くにある比較的安い値段でガソリンを販売しているガソリンスタンドの掲示文である。あるとき「諸般の事情により閉店する」という趣旨の掲示がなされた。諸般の事情とは何かは分からないが「残念だが仕方がない」と思ったものである。その後、しばらくすると「お客様各位へ 諸般の事情により従来通り営業を続けます。よろしくお願い致します。 店主敬白」との看板が出された。
私の言語感覚では、後者のような場合に「諸般の事情により」を使うことは理解できない。「皆様の強いご要望により」とか何とか書いた方がよいのでは、と思ったことである。
50 年以上の昔の話になるが、日本語として変な文章の表示がなされている看板や掲示を見つけるたびに、その看板や掲示を撮った写真を同封のうえ掲示者に注意し、改善を喚起する丁寧な手紙を送っていた老人の話を読んだことがある。改善された場合には、その改善内容も写真に撮り「これでよろしい」とユーモアたっぷりに発表していたという。私にはその気持ちがとてもよく理解できるが、ギスギスしたことの多い現代にあってはこのような余裕のある遣り取りは期待できないだろうとは思う。
同書125頁から始まるテーマは「あたらしい娯楽を考える」であり、雑誌「散歩の達人」に触発されて「変な文探し」を開始したことを書いている。
開始するにあたっての心得というかルールについて最初に思いを巡らし、「個人がするうっかりミスや間違いを対象にしないこと」「『人目に触れることを前提に作られている文』を対象にすること」と対象表現の範囲、範疇を限定した態度は、長年法律に付き合ってきた私には極めて合理的な思考と映る。
このルールに基づき著者が採集した「変な文」は
〇「カワイイはつくれる!」(花王)
〇「遠い国の女の子の、私は親になりました」(プラン・インターナショナル)
〇「パンにおいしい」(よつ葉バター)
〇「海老名市最高層を、住む」(小田急不動産)
であり、言語学者として、いろいろと考察を巡らせている。書かれている内容はとても興味深かったが、正直に言って私には難解な解説だった。
この文を読んで、かつて私が散歩の途中で見た二つの変な文章を思い出した。
その一つは、市立図書館本館へ連なる道の途中にある広大な空き地の囲いの傍にあった「関係者以外は無断で立入りを禁ずる」という語句と管理している会社の名前が書かれ、要所要所に設置された立て札である。
この横を通るたびに、「この文章の間違いを見つけ、正しい表現に直しましょう」とでもすれば、小学生の国語の問題に最適ではないかといつも思っていた。どうして「関係者以外の無断立入りを禁ずる」あるいは「関係者以外が無断で立ち入ることを禁ずる」と書くことができないのか。
二つ目は、我が家の近くにある比較的安い値段でガソリンを販売しているガソリンスタンドの掲示文である。あるとき「諸般の事情により閉店する」という趣旨の掲示がなされた。諸般の事情とは何かは分からないが「残念だが仕方がない」と思ったものである。その後、しばらくすると「お客様各位へ 諸般の事情により従来通り営業を続けます。よろしくお願い致します。 店主敬白」との看板が出された。
私の言語感覚では、後者のような場合に「諸般の事情により」を使うことは理解できない。「皆様の強いご要望により」とか何とか書いた方がよいのでは、と思ったことである。
50 年以上の昔の話になるが、日本語として変な文章の表示がなされている看板や掲示を見つけるたびに、その看板や掲示を撮った写真を同封のうえ掲示者に注意し、改善を喚起する丁寧な手紙を送っていた老人の話を読んだことがある。改善された場合には、その改善内容も写真に撮り「これでよろしい」とユーモアたっぷりに発表していたという。私にはその気持ちがとてもよく理解できるが、ギスギスしたことの多い現代にあってはこのような余裕のある遣り取りは期待できないだろうとは思う。