星の王子さま

星の王子さま

KEI(2022年8月3日)

 この欄で「星の王子さま」(著者;サン・テグジュペリ、訳者:内藤 濯、岩波書店)を取り上げるのはとても難しい。この本に深く思いを致されている方、何度も読み返された方、いろんな意味で愛読書とされている方がおられる中、生半可な文章は極めて危険である。下手な文章は書けない。そこでちょっと斜めの方向から書くこととした。
 書庫にはフランス語の「Le Petit Prance」1冊と内藤 濯さんの翻訳本「星の王子さま」2冊が約60年の間、眠っていた。買ったことは記憶しているが、きっちりと読み通した記憶はない。日本語の本は150頁ほどであるから、それほど時間をかけることなく読んだはずだが覚えていない。フランス語の方は数頁でギブアップした。
 今回改めてというか初めてというか、読み通した。読みながら「おとなというものは、数字がすきです」「人は、気のきいたことをいおうとすると、なんとなく、うそをつくことがあるものです」「たいせつなことはね、目に見えないんだよ」(いずれも内藤訳)を初めとした幾つかの言葉は不正確ながらも覚えている、あるいは読んだ記憶がある、ことに気が付いた。だからと言ってこの歳になるまでこれらの言葉を意識して行動したり、物事を判断したりしたという記憶もない。
 ということは私にとっては普通にある一冊の書物だったということになろうか。
 話は変わる。最近では内藤 濯さん以外のいろんな作家の翻訳による「星の王子さま」が発行されているのに気が付いた。河野万里子(新潮文庫)、倉橋由美子(宝島社)、管 啓次郎(角川文庫)、三田誠広(講談社青い鳥文庫)、池澤夏樹(集英社文庫)の皆さんなどなど。一説によると10冊以上の新しい翻訳本があるという。
 法律を勉強した身であるから、この理由は「原著の著作権が切れたからに違いない」と推測し、いつ切れたのかを調べた。ある国際知的財産事務所所属の弁理士のブログに「2005年1月22日に切れている」とあるのを見付けた。
 著作権切れによって新たに翻訳され、発行されたLe Petit Pranceの中には、子供向けではなく、大人を対象として翻訳されたものもありそうだ。
 とは言うものの私の古く硬い頭の中では「星の王子さま」は内藤 濯という名と強く結びつけられている。
 最後に。
 書庫に眠っていた3冊の現状はと言うと、フランス語の本と内藤さん訳の1冊は第二外国語としてフランス語を選択した孫娘の書棚に、残った内藤さんの1冊は妻が再読してみるというのでリビングのテーブルの上にある。