ふたつよいことさてないものよ
私は同じ本を2冊買うような不注意な人間ではないと思っていた。本を買う時には目的がはっきりとしており、「この本を買うのだ」ときっちりと意識していると信じていた。ところが書庫を整理していて同じ本が2冊あるケースに何度もぶつかった。
その理由を考えてみると、読書の時間も取れないほど忙しい時にたまたま覗いた書店で贔屓の著者の新刊や私が関心を持っているテーマについての本が目に止まり買ったような場合が思い当たる。忙しいこともあり買ったものの読まない内に買ったことすら忘れてしまい、再度買ったようなケースが多い。
もう一つのケースは東京単身赴任中の私と在阪の長女がそれぞれ買ったものである。これは仕方がない。
いま手許には河合隼雄さんの「こころの処方箋」の新潮社版ペーパーバックと文庫本がある。ペーパーバックを保有しているにも拘らず文庫本を買った理由ははっきりと覚えている。文庫本の末尾に谷川俊太郎さんの「三つの言葉」という5頁の短編が掲載されていたからである。そこには「こころの処方箋」に書かれている数々の言葉が河合さんの心の中でどのような過程を経て紡ぎ出されたかを谷川さんの見方で書かれていた。
最初に「こころの処方箋」を買ったのは今は廃業した古き良き時代の趣のある古本屋だった。宗教関係の本が並んでいる中に置かれていた。
何気なく手に取りパラパラと頁をめくると「ふたつよいことさてないものよ」という見出しというか箴言が目に付いた。続いて4頁ほどの文章でその意味することが実に解りやすく書かれていた。同じように合計55の箴言とそれについての短い説明や筆者の意見や見方が易しい言葉で書かれている。言葉は易しいがその意味するところは深いと思った。
河合さんは「(人間の心に関する)法則は好きではないが、それでも割とすきなのが『ふたつよいことさてないものよ』という法則である」と書いている。そして「この法則はまた、ふたつわるいこともさてないものよと言っていると考えられる。何かわるいこと嫌なことがあるとき、よく目をこらして見ると、それに見合う『よいこと』が存在していることが多い」と具体的に例を挙げて説明している。
読んで「なるほと」と頷かされる。
谷川俊太郎さんも「たとえば『ふたつよいことさてないものよ』は、河合さんの読者の間では流行語のようになっていて、私自身もことあるごとにこの言葉を呪文のように繰り返す。そういう力をもった言葉はそうざらにあるものではない」と書いている。
この2冊の「こころの処方箋」で覚えているのは唯一「ふたつよいことさてないものよ」だけである。
その理由を考えてみると、読書の時間も取れないほど忙しい時にたまたま覗いた書店で贔屓の著者の新刊や私が関心を持っているテーマについての本が目に止まり買ったような場合が思い当たる。忙しいこともあり買ったものの読まない内に買ったことすら忘れてしまい、再度買ったようなケースが多い。
もう一つのケースは東京単身赴任中の私と在阪の長女がそれぞれ買ったものである。これは仕方がない。
いま手許には河合隼雄さんの「こころの処方箋」の新潮社版ペーパーバックと文庫本がある。ペーパーバックを保有しているにも拘らず文庫本を買った理由ははっきりと覚えている。文庫本の末尾に谷川俊太郎さんの「三つの言葉」という5頁の短編が掲載されていたからである。そこには「こころの処方箋」に書かれている数々の言葉が河合さんの心の中でどのような過程を経て紡ぎ出されたかを谷川さんの見方で書かれていた。
最初に「こころの処方箋」を買ったのは今は廃業した古き良き時代の趣のある古本屋だった。宗教関係の本が並んでいる中に置かれていた。
何気なく手に取りパラパラと頁をめくると「ふたつよいことさてないものよ」という見出しというか箴言が目に付いた。続いて4頁ほどの文章でその意味することが実に解りやすく書かれていた。同じように合計55の箴言とそれについての短い説明や筆者の意見や見方が易しい言葉で書かれている。言葉は易しいがその意味するところは深いと思った。
河合さんは「(人間の心に関する)法則は好きではないが、それでも割とすきなのが『ふたつよいことさてないものよ』という法則である」と書いている。そして「この法則はまた、ふたつわるいこともさてないものよと言っていると考えられる。何かわるいこと嫌なことがあるとき、よく目をこらして見ると、それに見合う『よいこと』が存在していることが多い」と具体的に例を挙げて説明している。
読んで「なるほと」と頷かされる。
谷川俊太郎さんも「たとえば『ふたつよいことさてないものよ』は、河合さんの読者の間では流行語のようになっていて、私自身もことあるごとにこの言葉を呪文のように繰り返す。そういう力をもった言葉はそうざらにあるものではない」と書いている。
この2冊の「こころの処方箋」で覚えているのは唯一「ふたつよいことさてないものよ」だけである。