野の花さんぽ図鑑

野の花さんぽ図鑑

KEI(2020年9月2日)

 約370種の野の花が紹介されている「野の花さんぽ図鑑」(長谷川哲雄、築地書館)の「まえがき」には、「ほぼ2週間ごとに移り変わる日本の季節の変化を追って、身近に見られる植物を葉や花だけでなく…根や花の断面、実などを含めて紹介しました」とある。紅茶を片手に、読んで、眺めて実に楽しい図鑑である。
 鉛筆と透明水彩絵の具を使って書かれている絵は、素朴でありつつ対象の特徴を見事に捉え、雑草と言う名で一括りにされがちな植物それぞれの名前とその姿を正確に教えてくれる。
 その内容は、3月上旬の啓蟄に始まり、2月上旬から2月下旬の立春、雨水に至る24節季について10行ほどの文章で植物との関りを軽妙な文章で描写し、その後にその季節の野の花の絵が続く。
 9月下旬の秋分の項には、シュウカイドウ、シュウメイギク、ヒガンバナが描かれており、「ヒガンバナといい、シュウカイドウ、あるいはシュウメイギクやコスモスといい、外来の植物が日本の秋を彩るようになった。それがよいことなのかどうか…」(108頁)とある。
 原産地について言えば、確かにコスモスはメキシコ、その他は中国であるが、私としては、シュウメイギクやシュウカイドウが帰化植物と言われてもピンと来ない。我が家の庭や近くにある茶道の先生のお宅の玄関近くで、月明りに白く咲いているシュウメイギクを見ると、日本古来の植物だと思ってしまう。
 花だけでなく花を訪れるハチについても4頁を使って説明がある。そこには「植物―とりわけ花に関心があれば、おのずと昆虫についても考えることになる」と書かれている。続けて「日本にはいない熱帯アメリカのハチドリを知っている反面、身近にいる昼行性のスズメガのことをなにも知らないというのはけっしてよいこととは思えない」(56頁)とあるのを読むと、我が身がこの通りであるため、耳が痛い。ちなみにスズメガは、比較的ほっそりとした三角形の翅をもち、この翅を素早く羽ばたかせることでハチドリと同じように空中に静止(ホバリング)することもできる蛾である。
「本は本屋で本の顔を見て選ぶものだ」とのそれまでの持論から脱し、インターネットで注文すればどのような本でも翌日あるいは翌々日に入手できることを知った最初の本、即ち私が初めて恐る恐るインターネットで注文した本であることを、挟まれていたアマゾンの納品書兼領収書から思い出した。