タンポポ

タンポポ

KEI(2020年4月29日)

廃(すた)れたる園に踏み入り
 たんぽぽの白きを踏めば
  春たけにける
寝て読めば黄なる粉つく
 小さき字のロティなつかし
  たんぽぽの花

 いずれも白秋の「桐の花」にある。最初の歌の「白き」というのは、咲き終わった後の白い綿毛のことだとつい先日まで思っていたが、そうではなく「花弁が白い」ことを指しているそうだ。春山行夫氏の「花の文化史」(中央公論社)では「白秋の郷里の九州のタンポポは花弁が白いのでそれをさしているようであるが…」とある。調べてみると四国や九州の一部では「シロバナタンポポ」が主流のようだ。
 二句目のロティは海軍士官として二度来日し、日本を題材にした小説も書いているフランス人作家ピエール・ロティのことである。残念ながら、ロティについてはこれ以上のことは知らないし、その著作を読んだこともない。
 道端や公園の隅に咲いているタンポポは全て同じだと思っていたが、在来種の日本タンポポと外来種の西洋タンポポがあるということと、その違い、見分け方を小学校1年生だった長男が教えてくれた。
 その時、花の下にある総苞(そうほう)という部分が真っ直ぐなのが在来種で、反り返っているのが外来種だと覚えた。子供と遊んでいた公園の周りや公園から帰宅途中の道端に生えていたタンポポは全て外来種だった。
 どういう訳か、タンポポをフランス語では dent de lion(ライオンの歯)ということを知っている。
 また、どこで読んだか記憶が定かではないが、その葉は西洋ではサラダの材料としても用いられること、根は煎じてコーヒー類似飲料(ノンカフェインであるから妊婦や授乳中の女性に愛用されている)とすることもできる、ことも知っている。
 これらを知っているからと言って、タンポポ・コーヒーを飲んだからと言って威張ることでもないけれど。
 植物学者田中修氏の「都会の花と木」(中央公論社)の中に、タンポポの花びらの数についての興味深い話が書かれている。
「一つの花にある花びらの数は、多くの植物で決まっている。ダイコンやアブラナなら4枚、サクラのソメイヨシノやスミレなら5枚である。では『タンポポの花に花びらは何枚か』と尋ねられると、どのように答えられるだろうか」
 田中氏によると3通りの答え方があるそうだ。
  1. タンポポの花を花びらが多くある大きな花と思っている人は、約200枚(セイヨウタンポポ)あるいは約100枚(カンサイタンポポ、カントウタンポポ)と答える。
  2. タンポポの花は小さな花が集まって出来ていることを知っており、花びらの一枚一枚が一つの小さな花の花びらだと知っている人は、花びらの数は1枚だと答える。
  3. さらにこの1枚の小さな花びらは、幾つかの花びらがくっついて1枚になっていることを知っている人は、花びらの数は5枚である、と答えるだろうと。

 最初の答は、我われが普通に「タンポポの花」という花びらが多くある大きな花は小さな花が集まった「頭花(とうか)」あるいは「頭状花(とうじょうか)」と言われることを根拠にしている。
 二番目の答は、「タンポポの花」から花びらのように見える一枚をつまみだすと、そこにはオシベもメシベも付いている。だからこれが花であり、花びらの数は1枚となる。この小さな花はその形から「舌状花(ぜつじょうか)」という。
 三番目の答はこの「舌状花」をよく観察すると、先の方に四つの切れ込みがある。これはアサガオやキキョウと同じように5枚の花びらがくっついたのだろうと想像できる。これを「合弁花(ごうべんか)」というが、花びら自体は本当は5枚である。
 子どもの頃から慣れ親しんでいるタンポポ、道端にひっそりと生えているタンポポからもいろいろと勉強することがありそうだ。