DONDUG

DONDUG

KEI(2020年2月19日)

 DONDUGは“どんたく”と読む。オランダ語の Zontag が転化したもので日曜日や休息日を意味する言葉だそうだ。
 このDONDUG を表題とした詩集は私が唯一持っているちょっと珍しい書物である。竹久夢二の絵入り小唄集で、奥付には大正11月1日印刷、同11月5日実業之日本社発行、著者竹久夢二とある。著者名の下部には直径3cmほどの竹の字だけが彫られた丸い印鑑が押されている。148頁のこの本は新書版ほどの大きさで、表紙は硬い紙に図案化された一羽の小鳥と三つの小さな鈴が描かれている。定価は50銭。
 駅前で古書肆を営んでいた伯母が中学生だった私にくれたものであるが、貰ったときの伯母との会話は覚えていない。貰って以来“大事に大事に”してきた。
 私の蔵書の多くとは形や装丁が明らかに違っており目立たない書物なので、引越しや図書の移動などのときには、他の書物の間に紛れ込み行方不明にならないよう特に注意して扱ってきた。その結果、60数年経った現在でもこの本が置かれている位置は、私の頭の中でははっきりとしている。
 この絵入り小唄集は「こはわが少年の日のいとしき小唄なり。いまは過ぎし日のおさなきどちにこのひとまきをおくらむ。お花よ、お蝶よ、お駒よ、小春よ。太郎よ、次郎よ、草之助よ。げに御身たちはわがつたなき草笛の最初のききてなりき」で始まる。そして「NEMU-NO-KI NEMU-NO-KI NEYA SYANSE. OKANE GA NATTARA OKYA SYANSE.」とローマ字の唄が続く
 有名な「まてどくらせどこぬひとを 宵待草(よひまちぐさ)のやるせなさ こよひは月もでぬさうな」(宵待草)はこの本の111頁にある。
 紙質も悪く、印刷も最近のものに比べれば鮮明ではないが、使われている活字とところどころに描かれている夢二の絵とが相俟って、全体として大正ロマンを醸(かも)していると評するのは、私の郷愁のなせる業だろうか。
 最近ではほとんど手に取ることもないが、これからも手にするたびに伯母を思い出すことだろう。