百人一首
お正月には家族そろって百人一首で遊ぶのが恒例、というご家庭は、現在どれほどあるのだろう。子供達や孫達が幼い頃は「坊主めくり」、そして小学校に入ったら「散らしどり」や「源平合戦」を楽しむのがよく知られた風景だったが。
書庫には何種類かの「百人一首」の解説本がある。それぞれに思い出がある。
一番古いのは「新注 小倉百人一首」(白楊社)である。高校の国語の副読本として使ったものだろうが、ところどころに私の字で鉛筆書きの川柳が書かれている。天智天皇の「秋の田の」には「衣食住まず第一と定家入れ」、阿倍仲麻呂の「天の原」には「百人の中で唐紙へ一首書き」といった具合である。授業の中で教えられたのだろう。
池田弥三郎の「百人一首故事物語」(河出書房新社)は語釈よりも伝承を知りたくて買った。ここでは天智天皇の歌について「食うことがまず第一と定家選(よ)り」が載せられている。
石田吉貞の「鑑賞 百人一首」(淡交社)は全ての歌に添えられている絵(冷泉為恭)と書壇の著名な書家(と紹介されているだけで個別の名前は書かれていない)の書が気に入り買った。買って妻に「はい、プレゼント」と言って渡したのだろうか、挟まれた書店のしおりの隅に「S46.12.16旦那様よりプレゼント」と妻の字で書かれている。これは今まで気が付かなかった。
尾崎雅嘉の「百人一首一夕話」上下2巻(岩波文庫)は、谷沢永一だったか渡辺昇一だったかが名著として推薦していたものである。ときどき思い出したように眺め、適当に一首を選び読んでいる。天保4年の木版本が底本であるため現代人の私にはちょっと読みにくい。
織田正吉「絢爛たる暗号 百人一首の謎を解く」はとても面白い。「なぜ駄歌・愚作が入っているのか」「選歌基準が不審(「不明確」ではなく「不審」が使われている)である」「伝承と記録が食い違っている」などといった素朴な疑問の謎に素人の大胆さと率直さで挑戦している。学界の常識や既成概念から解き放たれた解釈にはとても興奮した。
田辺聖子「田辺聖子の小倉百人一首」上下2巻(角川文庫)は、今は廃業した近所の古本屋で買ったものである(古本屋の主人の字で2冊300円と書かれている)。田辺聖子一流の軽やかな、しかし奥行きのある文体で書かれており、とても読み易く読んで楽しい。そしてそれぞれの歌に添えられた鮮やかな色彩、現代的な構図、奔放な描線で描かれた岡田嘉夫の絵が実に美しい。
神奈川に住んでいる孫娘が春休みに来阪したとき「じいじ、百人一首をしよう」という。聞けば学校で習っているという。小学4年生に負けるわけにはいかない、と本気を出したが、いい勝負だった。
幼い頃から百人一首に触れることは、情操を培い、教養の一端を形成すると共に他の文芸、芸能の理解にも繋がるので望ましいと思ったことである。
書庫には何種類かの「百人一首」の解説本がある。それぞれに思い出がある。
一番古いのは「新注 小倉百人一首」(白楊社)である。高校の国語の副読本として使ったものだろうが、ところどころに私の字で鉛筆書きの川柳が書かれている。天智天皇の「秋の田の」には「衣食住まず第一と定家入れ」、阿倍仲麻呂の「天の原」には「百人の中で唐紙へ一首書き」といった具合である。授業の中で教えられたのだろう。
池田弥三郎の「百人一首故事物語」(河出書房新社)は語釈よりも伝承を知りたくて買った。ここでは天智天皇の歌について「食うことがまず第一と定家選(よ)り」が載せられている。
石田吉貞の「鑑賞 百人一首」(淡交社)は全ての歌に添えられている絵(冷泉為恭)と書壇の著名な書家(と紹介されているだけで個別の名前は書かれていない)の書が気に入り買った。買って妻に「はい、プレゼント」と言って渡したのだろうか、挟まれた書店のしおりの隅に「S46.12.16旦那様よりプレゼント」と妻の字で書かれている。これは今まで気が付かなかった。
尾崎雅嘉の「百人一首一夕話」上下2巻(岩波文庫)は、谷沢永一だったか渡辺昇一だったかが名著として推薦していたものである。ときどき思い出したように眺め、適当に一首を選び読んでいる。天保4年の木版本が底本であるため現代人の私にはちょっと読みにくい。
織田正吉「絢爛たる暗号 百人一首の謎を解く」はとても面白い。「なぜ駄歌・愚作が入っているのか」「選歌基準が不審(「不明確」ではなく「不審」が使われている)である」「伝承と記録が食い違っている」などといった素朴な疑問の謎に素人の大胆さと率直さで挑戦している。学界の常識や既成概念から解き放たれた解釈にはとても興奮した。
田辺聖子「田辺聖子の小倉百人一首」上下2巻(角川文庫)は、今は廃業した近所の古本屋で買ったものである(古本屋の主人の字で2冊300円と書かれている)。田辺聖子一流の軽やかな、しかし奥行きのある文体で書かれており、とても読み易く読んで楽しい。そしてそれぞれの歌に添えられた鮮やかな色彩、現代的な構図、奔放な描線で描かれた岡田嘉夫の絵が実に美しい。
神奈川に住んでいる孫娘が春休みに来阪したとき「じいじ、百人一首をしよう」という。聞けば学校で習っているという。小学4年生に負けるわけにはいかない、と本気を出したが、いい勝負だった。
幼い頃から百人一首に触れることは、情操を培い、教養の一端を形成すると共に他の文芸、芸能の理解にも繋がるので望ましいと思ったことである。