読めない絵本

読めない絵本

KEI(2019年5月15日)

 数多くの面白い絵、楽しい絵、美しい絵が描かれているインドネシア語、タイ語、ノルウェー語、イタリア語、フランス語、英語の絵本が書庫の奥に保存されている。出張でこれらの国を訪れた際に、忙しかった仕事の合間のほんの少しの余裕時間を使って、書店に行き、買い求めたものである。
 インドネシア語の絵本は、仕事先の会社の社長秘書に「内容は何でもいいから小さな子供用の絵本を数冊買ってきて」と頼み、買って貰ったという記憶がある。この時は「言葉も解らないのにどうして絵本を買うの?」と思ったのだろう、変な顔で「子供用の本ですね。インドネシア語ですね。それを買うのですね」と何度も確認された。
 なぜ、読めない絵本を買ったのか。その理由ははっきりとは思い出せないが、毎日が仕事で忙しく、休日出勤や残業も多く、子供たちとのコミュニケーションが少ないことが気になり、話題作りという意味で買ったのかも分からない。そう言えば、手元に多数あるこれらの国のコインは子供たちに見せるために意識的に全金種を集めたのだった。
 読めない絵本を買った理由はともかく、改めてこれらの絵本を眺めてみると実に楽しい。
「西洋のあの話のインドネシア版、タイ版だろうか」「日本の昔話に似ているなあ」と、描かれている擬人化された動物の絵から何となく内容が推測できるものもある。
 しっかりとした作りのフランス語の絵本は、本の中央部に2ヶ所指が入るような穴が開けられており、指を入れるとそれが描かれた人物の足になったり、牛の角になったり、猿の尻尾になったり、象の鼻になったりする。
 ピノキオなどの話が入っているイタリアの絵本は、実に明るく、カラフルなクレヨン画が各頁に現れる。イタリア国旗の色を含む4色で書かれた派手なタイトルも見ていると楽しくなる。同じイタリアの絵本でもクオーレ(愛の学校)に添えられた絵は輪郭がはっきりと描かれており、記憶にある子供の頃に読んだ日本語の絵本の絵とよく似ている。
 私が少し大きくなってから冒険物語として読んだノルウェーの学者ヘイエルダールが南米ペルーから南太平洋の島まで航海したときの記録「コンチキ号」のノルウェー語版には各頁にコンチキ号自体、人物、魚、風景など数多くの線描画が入っている。
 これらは読めない絵本だが、読んでいない絵本もある。自分のためにと買ったザ・リアル・マザーグースと題された大型の絵本がその内の1冊である。マザーグースはリズムや韻を踏んでおり、なぞなぞや言葉遊びの要素もあり、難解であることは知っていたが、しっかりとした装丁といかにも西洋を思わせる絵に惹かれて買ったものである。予想どおり今まで読むことはなかった。
 以上、読めない絵本、読むことのなかった絵本のお話である。