「谷川俊太郎質問箱」

「谷川俊太郎質問箱」
麻(2026年4月8日)

 2024年11月にお亡くなりになった谷川俊太郎さんについては断片的ではありますが、いろんなことを知っているような気がしています。しかし絵本や詩を含めてその著作物の一部を読んだとは思いますが、今ではいつ何を読んだかどうかもはっきりとは覚えていません。多くの人に敬愛されている詩人、翻訳家、絵本作家、脚本家の谷川俊太郎さんは、誠に失礼なことながら、私にとっては哲学者、評論家だった谷川徹三さんのご長男というイメージが最初に来ます。

 市立図書館から送られてきた最新号のメールマガジンで、「図書館職員が今までの読書体験の中から紹介する珠玉の1冊」として「谷川俊太郎質問箱」(谷川俊太郎、東京糸井重里事務所)が紹介されていました。紹介者(あ)さんは谷川さんのこの本を紹介する文章に続いて最後に「この本を読んでいるとまるで隣で語りかけてくれているように感じます」という言葉を書いていました。

 この紹介文に惹かれて手に取った2007年発行のこの本は余白が多くゆったりとしたかなりお洒落な本です。ただ、視力が衰えている私はこれだけ余白があるのなら、もう少し大きな活字で組んで欲しいと思ったのも事実です。
 この本ではWEBサイトに連載された谷川さんに対する質問とそれに対する谷川さんの答が見開きで掲載されています。

 質問と答の内、比較的短い質問とそれに対する谷川さんの答をちょっと書いてみましょう。

57歳の質問>
 車、飛行機、そのあとに続く乗りものって、まだないと思うんです。ぼくたちはこれからいったい何に乗ればいいんでしょうか。
<谷川さんの答>
 雲に乗るのもいいし、風に乗るのもいいし、音に乗るのもいいし、気持ちに乗るのもいいんじゃないかなあ。機械じゃない乗りもの、手でさわれない乗りものが、未来の乗りものです。

65歳の質問>
 人間ははるかな昔から「国」という仕組みをもってきました。「国」なしの人間なんて想像できないほどです。しかし「国」はさまざまな災いの元でもありました。質問です。人間はどうして「国」をもたなければならないのでしょう。「国」に所属しない人間は「無国籍者」で悪い人なのでしょうか。
<谷川さんの答>
 私の父親は哲学者でしたが、しばらく世界政府運動にかかわっていた時期がありました。国連を発展させていく方向で、最終的に国家というものをなくそうという運動だったのだと思います。‥‥‥人間は群棲動物ですから、群れをなして互いに助け合っていかなければ生きていけない動物です。‥‥‥過去のアメリカ先住民などは、国家を作らずに生きていたらしいのですが、そういう共同体モデルを時代遅れとみなすことはできないし、むしろそこに人類の将来をイメージすることもできるでしょう。国家をなくしていく方向に人類の未来があることは、はっきりしていますから、「無国籍者」は悪い人ではなく、単に不便を気にかけない人ではないでしょうか。

<母代筆による小学二年生の質問>
 小学二年生の娘、「はっつあん」の質問です。「どうして山は、どこにでもあるんですか」と訊きたいそうです。
<谷川さんの答>
 河の底には山はないよ、砂漠の真ん中にも山はないよ、都会の街角にも山はないよ、空港にも山はないよ、どうして山がどこにでもあると思ったのかなあ。どこにでもあるというものではないから、山はあると目立つんだと思う。だから山を見ると気持ちがスカッとする、山を見ると登りたくなる。山だらけだったら、山に飽きちゃうよね。はっつあんは山がたくさんあるとこに住んでいて、山にあきあきしてるの?

 その他、6歳の「どうして、にんげんは死ぬの?さえちゃんは、死ぬのいやだよ」、34歳の「普通の言葉と、詩の言葉の違いは何ですか?」、24歳の「小学校は国語算数理科社会。新たに一教科加えるとしたら、どんなものがいいでしょうか?」などがありました。掲載されている63の質問について私ならどう答えるだろうか、と考えながら谷川さんの答を読んだことでした。