妖精に会いたい

妖精に会いたい

チャッピー(2016年5月11日)

 私は、本を読むとその世界に入りたいとすぐに思う子どもでした。以前出した「魔女になりたい」に続いて「妖精に会いたい」と思い続けた話です。
 とっても気に入ってた絵本がありました。妖精の話です。その妖精は、森の中に住んでいました。小さな小さな女の子で、真っ白なドレスを着て、真っ白な羽がついていました。
「このかわいい妖精に会ってみたい」「どこに行ったら会えるのだろう」絵本をめくりながら毎日思っていました。きっとどこかで会えるに違いない。
 我が家の近所に修道院がありました。クリーム色で赤い屋根の建物でした。入り口には立派な鉄の格子扉がありました。別の世界の入り口のようでした。そこから、中をのぞくと庭が続き、ピンクのバラが咲きほこり、バラのアーチやトンネルがありました。
「ここだ。妖精がこの庭にいるに違いない。絶対、ここにいる」
 修道院のシスターたちは、鍵のかかった横の木戸から出入りしています。小さな木戸は、足をかけたら壊れてしまいそうでした。そこで、私はこの鉄の格子扉から中に入ろうと決意しました。妖精に会うためです。
 誰も見ていないことを確かめると、鉄の格子扉に足をかけて乗り越えました。成功です。バラのトンネルの中でじっと妖精が出てくるのを待ちました。ピンクのバラの下は、夢の中のような場所でした。私は、幸せな気持ちでじっと待ち続けました。
「何してるの?」
 バラの中から優しい声が聞こえました。妖精に会いになんて言えなくて、黙っていると
「どうやって入ったの? いけませんよ」
 とうとう、木戸から出されました。でも、妖精に会いたいという気持ちは募ります。数日経ってからまた鉄の扉を登りました。今度は絵本も持って行きました。絵本の妖精が
「私のことだわ」
と出て来てくれそうな気がしました。でもこの日もシスターに見つかって、木戸から出されました。
 この後、母に厳しく叱られました。ご近所の修道院のシスターたちは、私のことをどこの子かちゃんと知っていたのです。
 それでも、あきらめがつかず、格子戸から庭のバラの花を眺め続けました。
「きっと、人間がいるから妖精は出てこないのだろうな」
と思いました。
 この外国の絵本は、自分の家では買ってもらえないものでした。多分、学校の図書室で借りた本です。題名も覚えていません。どの本だったかなぁとちょっと調べてみると、シシリー・メアリー・バーカー作の絵本のような気がします。子ども時代にこんな夢のある絵本に接したことは、幸せでした。そして、私を「会いたい」と思うほどにさせたこの絵本の力の大きさも思います。実際には会えなかったけど、妖精は、ちゃんとバラの花の中にいると今でも思うのです。