サパナ(夢)図書室
「少しだけど、子どもたちのために使ってね」友人がくれた図書券を抱えてブックオフへ一走り。子どもたちが目を輝かせて読む姿を想像すると選書にも力が入る。私は、今日購入した本を抱えて、ネパールのサチコール村へ旅立つ。
日本から飛行機で約9時間。ネパールの首都カトマンドゥに到着すると、バスとジープに乗り換えて途中一泊して13時間。さらに、山岳地帯の山道を3時間歩いてサチコール村に到着する。遠くにエベレストやダウラギリの雄大な山並みが見える奥深い地だ。
私は、10年前日本のNGO「世界の子どもと手をつなぐ会」が作ったヘルスポスト(診療所)の手伝いのために、初めてこの地を訪れた。それ以来、この地の魅力に取り付かれて、毎年、訪れることになった。
初めて行った時に、二冊の紙芝居を持参した。一冊は「アヒルのピッピとニワトリのピー」言葉は分からなくても鳴き声は共通だろうと思った。この紙芝居は大受けした。が、もう一冊「同じだ 同じだ」は全然ダメだった。洋服を着たニワトリが人間のようにして歩く絵を見て「そんなことはない」と大騒ぎになり物語の中に入ることもできなくてこの紙芝居は隠さざるを得なかった。
次の年。考えた末に「日本昔話」の紙芝居を何冊か持っていった。畑で土を耕す光景やタネを蒔く姿、家から立ち上る煙の様子など、日本の昔の光景とサチコール村の様子が合致するのか、読むたびに笑いが起き、「アンコール」をねだられた。読むと言っても日本語は通じる訳はなく、会話だけをネパール語に訳してもらったものを大げさな声で読んだ。農作業でひと息つく時間に村の広場で読み続けた。
ところが、子どもたちが私に代わって紙芝居を読み出した。ネパール語に訳したからといって文字は、カタカナ。読めるはずがない。子どもたちは、絵を見ながら自分たちの物語を創り、それを語りだしたのだ。何という創造力か、その姿に胸が熱くなった。
通い出して何年目かに、村の学校の横に村人たち手作りの「図書室」が建った。多くの友人達の資金援助によるものだった。二階建てで、集会室を兼ねている。
その図書室の名は「サパナ」日本語で「夢」だ。
村人たちは、図書室にある本を読みながら『夢』を語り合う。現在、200冊ほどの本が棚に入っていて、読み続けられている。最初に持っていった紙芝居はボロボロになっているが、大事に読み伝えられている。
昨年だったか。ふと思いついて「洋服を着たニワトリが人間のようにして歩く絵」の紙芝居を試しにやってみた。不思議と違和感なく入っていき、いつかの大騒動もなかった。この10年近く、様々な本の文化に接してきた村人たちの心は、擬人化もちゃんと受け付けるようになっていったのだと感慨深かった。
ブックオフで今回選んだのは、数々の「迷路の絵本」だ。読み聞かせが始まると、いつものように「大人たちの輪」ができ、その次が子どもたちだ。子どもたちは、大人の時間が終わるまで後ろでちゃんと待っている。
「待っててね。もうすぐ、新しい本を届けるからね」
膨らんだリュックをよしよしとなぜた。
*このコラム欄で、サチコール村の小さな図書室のことを知っていただける機会を得ました。
また、いつの日か、投稿したいと思います。
日本から飛行機で約9時間。ネパールの首都カトマンドゥに到着すると、バスとジープに乗り換えて途中一泊して13時間。さらに、山岳地帯の山道を3時間歩いてサチコール村に到着する。遠くにエベレストやダウラギリの雄大な山並みが見える奥深い地だ。
私は、10年前日本のNGO「世界の子どもと手をつなぐ会」が作ったヘルスポスト(診療所)の手伝いのために、初めてこの地を訪れた。それ以来、この地の魅力に取り付かれて、毎年、訪れることになった。
初めて行った時に、二冊の紙芝居を持参した。一冊は「アヒルのピッピとニワトリのピー」言葉は分からなくても鳴き声は共通だろうと思った。この紙芝居は大受けした。が、もう一冊「同じだ 同じだ」は全然ダメだった。洋服を着たニワトリが人間のようにして歩く絵を見て「そんなことはない」と大騒ぎになり物語の中に入ることもできなくてこの紙芝居は隠さざるを得なかった。
次の年。考えた末に「日本昔話」の紙芝居を何冊か持っていった。畑で土を耕す光景やタネを蒔く姿、家から立ち上る煙の様子など、日本の昔の光景とサチコール村の様子が合致するのか、読むたびに笑いが起き、「アンコール」をねだられた。読むと言っても日本語は通じる訳はなく、会話だけをネパール語に訳してもらったものを大げさな声で読んだ。農作業でひと息つく時間に村の広場で読み続けた。
ところが、子どもたちが私に代わって紙芝居を読み出した。ネパール語に訳したからといって文字は、カタカナ。読めるはずがない。子どもたちは、絵を見ながら自分たちの物語を創り、それを語りだしたのだ。何という創造力か、その姿に胸が熱くなった。
通い出して何年目かに、村の学校の横に村人たち手作りの「図書室」が建った。多くの友人達の資金援助によるものだった。二階建てで、集会室を兼ねている。
その図書室の名は「サパナ」日本語で「夢」だ。
村人たちは、図書室にある本を読みながら『夢』を語り合う。現在、200冊ほどの本が棚に入っていて、読み続けられている。最初に持っていった紙芝居はボロボロになっているが、大事に読み伝えられている。
昨年だったか。ふと思いついて「洋服を着たニワトリが人間のようにして歩く絵」の紙芝居を試しにやってみた。不思議と違和感なく入っていき、いつかの大騒動もなかった。この10年近く、様々な本の文化に接してきた村人たちの心は、擬人化もちゃんと受け付けるようになっていったのだと感慨深かった。
ブックオフで今回選んだのは、数々の「迷路の絵本」だ。読み聞かせが始まると、いつものように「大人たちの輪」ができ、その次が子どもたちだ。子どもたちは、大人の時間が終わるまで後ろでちゃんと待っている。
「待っててね。もうすぐ、新しい本を届けるからね」
膨らんだリュックをよしよしとなぜた。
*このコラム欄で、サチコール村の小さな図書室のことを知っていただける機会を得ました。
また、いつの日か、投稿したいと思います。